東芝が定時株主総会に提出した永山治取締役会議長らの再任案が否決された。これは、日本の従来の「企業統治」が崩壊した重大事件である。再任案否決の原因は、2020年の株主総会において、東芝と経済産業省が一体となって株主であるファンド等に不当な圧力をかけたという「圧力問題」にある。
いかにして東芝経営陣による企業統治は崩壊したのか
そもそも東芝が「企業統治崩壊」に陥った背景をおさらいしておこう。
東芝は、2016年の不正会計処理とともに、2017年3月の米国連結子会社ウェスティングハウス(WH)の倒産により、2017年3月期に2757億円の債務超過に陥った。そのため、2017年8月1日に東証二部に指定替えとなり、2018年3月期末までに債務超過を解消しなければ上場廃止になるという状況に追い込まれた。
そこで東芝経営陣は「最後の手段」として、2017年12月に、アクティビスト、いわゆる「もの言う株主」を含む外国投資家に対し約6000億円の第三者割当増資を行った。このため、大株主との対話は不可欠となっていたのだが、東芝の経営陣は対話よりも圧力を選んでしまった。これが「企業統治崩壊」を引き起こしたのだった。
この「企業統治崩壊」が提起する論点を整理しておく(図1)。