米ニューヨーク市場のダウ平均株価がついに、6年4カ月前に記録したITバブル崩壊後の最安値(7197ドル)を割り込んだ。昨秋の「リーマン・ショック」でも死守した一線を越え、株式市場には金融不安と景気後退のもたらす閉塞感が強まっている。時折気付いたように買い戻しが入るものの、オバマ政権発足後の前日比騰落「星取表」は、10勝17敗(2月26日まで)と大きな負け越しとなり、下落幅も1000ドルを超える。
オバマ氏が大統領選からスローガンに掲げていた「チェンジ」が目に見えず、ニューヨーク市場はその苛立ちを乱れた下降線で示しているようだ。実際、昨年末には70%台を誇ったオバマ支持率が、一部調査では50%台まで低下。変革への期待を背負った新大統領に対する信認は、微妙に揺らぎ始めた。
昨年12月初め、ウォールストリート・ジャーナル紙とNBCテレビの共同世論調査では、オバマ次期大統領(当時)が73%の支持率を獲得。就任直前としては、1992年のクリントン、2000年のブッシュ両大統領をしのいだ。この調査が行われたのは、2007年12月に遡ってリセッション(景気後退)宣言が正式発表された直後。金融危機が渦巻く中、買い物や旅行を断念した米国民が家族や親族と感謝祭(11月27日)をささやかに祝い、年明けの現状打開をオバマ新政権に託した。
それからわずか2カ月半。新政権発足から1カ月が過ぎた2月下旬、各種世論調査では支持率のばらつきや低下傾向が目立ち始めた。米ギャラップ社によると、大統領支持率は就任直後の68%から59%に下がり、初めて6割を切った。ニューヨーク・タイムズ紙とCBSテレビの最新共同調査でも63%にとどまる。
一方、不支持率は2割前後。日本と違い、指導者が根底から信頼を失ったわけではない。就任後わずか1カ月で、7872億ドル(約76兆円)に上る過去最大級の景気対策法が公約通り成立。2月24日の施政方針演説では、オバマ大統領が「米国の再建・再生を果たす」と高らかに謳い上げ、党派を超えて喝采を浴びた。依然、カリスマ性は健在だ。
しかし気が短い市場は、新政権に「次の一手」を執拗に迫り続ける。2月25日、米政府は連邦準備制度理事会(FRB)と一体となり、大手金融機関に対してストレステスト(耐性テスト)と呼ばれる一斉検査を始めた。資本不足の恐れがある金融機関に公的資金の追加注入を辞さぬ姿勢も明確にし、金融安定化に努める方針をアピールした。
それでも、市場は納得しない。検査結果は4月末に出揃うのに、「気が遠くなるくらいの未来」(米証券ディーラー)と待ち切れない。バーナンキFRB議長が議会証言で「銀行の国有化は必要ない」と再三訴えても、発言を額面通り受け取る市場関係者は皆無に近い。