シティとバンカメ株、9割超も暴落
2007年10月9日に記録した史上最高値1万4164ドル(終値ベース)に比べると、ダウの現行水準はほぼ半値。この間、金融株の代表格であるシティグループとバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)の株価は、9割超も下がっている、このフリーフォールが相場全体の下げを主導する中、「底値がどこなのか誰にも分からない」(中堅証券)状態が続く。
2月11日以降、ダウは日中の取引でも8000ドルの大台を回復できない。23日には一時7105ドルを付け、いよいよ7000ドルの節目を突き抜けるかというレベルまで下落。この日の終値は、1997年5月以来、実に11年9カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。
当コラムでも指摘したように、昨年末の市場は株価再浮上のきっかけを探っていた。それはあくまで「ビッグ3破綻」など、あく抜きを伴う一大イベントの発生が前提条件。実際には、決定的な「事件」が起こらないまま、株価はジリ安に転じた。だからこそ、ウォール街は「これでは底打ちを期待できない」という悲観論に支配されている。
一方、空前の大型景気対策が実行段階に移ると、金融機関への公的資金の追加注入が現実味を帯び始めた。市場では米国債大量発行への警戒感が台頭し、長期金利は急速に上昇しだした。
それに伴い、事実上のゼロ金利政策で年明けも低下傾向が続いていた住宅ローン金利が反転し、新規ローン契約や借り換え需要が一気に冷え込んでしまった。住宅不況の更なる深刻化が、景気を一層後退させる恐れも出ている。
日米合意を市場が一蹴、いつまで続くドル堅調
こうした中でも、ドル相場が対主要通貨で堅調を維持するため、辛うじて「米国売り」は回避されている。2月24日、オバマ大統領と初の首脳会談を終えた麻生太郎首相は「ドルの信認維持で一致した」と成果を強調し、自国通貨(=円)売りを容認した。暗さばかりが際立つ日本経済への警戒感がドル買いを支える。
「米国売り」脅えるウォール街〔AFPBB News〕
見せかけの日米合意を市場が「影響力ゼロ」(米銀筋)と一蹴したのは当然だが、最近のドル高基調については「2月は米国債の償還期に当たり、ドル需要が強い」という季節要因を指摘する声が少なくない。また、「日欧経済の先行き不透明感に比べれば、米国のほうがマシ」との見方も多く、積極的なドル買いとは若干趣が異なる。
しかし、ドル買いが一本調子に進む保証はない。例えば、日本の3月決算期末にかけ、輸出企業による円買い・ドル売りが強まるのが恒例行事。昨秋の金融危機をきっかけに一部でささやかれていた「ドル暴落説」は影を潜めたが、完全に消え去ったわけでもない。
オバマ政権は足元の実体経済を主戦場と捉え、大型景気対策や金融安定化策を次々に繰り出しては、市場の評価を獲得してきた。果たして、そこに死角はないのか。政策が着実に成果を上げるまで、じっくり待つ余裕がないのも市場の宿命。政権支持率の緩やかな低下と、ジリ安株価を合わせて考えれば、ウォール街からは「米国売り」に陥るリスクが透けて見えてくる。