グローバル化で雇用が5%失われた

 経常黒字は、かつては貿易黒字(外需)のことだったが、2000年代以降、その中身は大きく変わった。図2のように、貿易黒字はほとんどなくなり、ときには赤字になっている。その代わり大きく増えたのが、所得収支(第1次所得収支)である。これはほとんど海外投資収益で、特に直接投資(海外子会社や企業買収)が増えている。

図2 経常収支の推移(財務省)

 その最大の原因は新興国の貿易黒字で、日本のメーカーが電機製品などをアジアで現地生産して輸入するようになったことである。デフレの最大の原因は、1990年代から中国や旧社会主義国の安い労働力が大量に供給され、製造業のグローバル化で国内投資が減ったことなのだ。

 これは国際収支統計では見えない。貿易黒字は国内の工場でつくって海外に輸出するので国内に雇用が発生するが、海外子会社の雇用は海外に発生するので、所得収支はGDP(国内総生産)に含まれないのだ

 これについては政府統計が変わり、最近は所得収支を含むGNI(国民総所得)でみるようになった。これによると、図3のように最近ではGNIがGDPより5%(25兆円)ぐらい大きい。この差は、かつては貿易黒字だったが、今は所得収支の黒字になっている。

図3 国民総所得(GNI)と国内総生産(GDP)内閣府

 国民所得統計では一貫してGNIがGDPより大きいが、1990年代にはその差が貿易黒字(国内の雇用)だったのに対して、今は海外子会社の収益に置き換わっている。貯蓄・投資バランスは同じだが、海外投資が5%増えて国内投資が減ったのだ。