弁護士・社労士・税理士 菰田泰隆さんに聞く

 自分や家族に、もしものことがあったら……。新型コロナウイルスの影響もあり、「相続」を意識する機会が増えてきました。そこで今回は、弁護士事務所による相続の相談窓口「相続LOUNGE」を福岡市で運営する菰田泰隆さんに、相続税対策や遺言書の作り方、早めに相続対策することのメリットについて教えていただきました。

菰田泰隆さん

弁護士・社労士・税理士
菰田 泰隆(こもだ・やすたか)さん

弁護士法人菰田総合法律事務所代表弁護士、社会保険労務士法人、菰田総合コンサルティング代表社労士、税理士法人菰田総合コンサルティング代表税理士。1983年生まれ。九州大学法学部・早稲田大学大学院法務研究科卒。2012年、弁護士登録と同時に菰田法律事務所(現:弁護士法人菰田総合法律事務所)を設立。

「相続でもめたくないから準備してほしい」

 ──こういう聞き方をしていいかどうか微妙ですが、「相続LOUNGE」は賑わっているのでしょうか?

 菰田 おかげさまで、相談件数はずっと多い状態が続いています。最近増えてきたということでもなく、常にたくさんの相談をいただいています。

 ──保険の相談窓口はショッピングセンターなどでよく見かけますけど、「相続」を表に出しているところは、なかなか街で見かけませんからね。

相続LOUNGE2020年、博多マルイ内にオープンした「相続LOUNGE」

 菰田 今まで相続について相談できる場所といえば、銀行や保険屋さん、不動産会社など、「士業」ではない人たちでした。もちろん親身になって相談に乗ってくれるとは思うのですが、たとえば保険会社なら、どうしても保険を組んでもらうことが目的になってしまうので、純粋にその人の相続のことだけを考えてアドバイスしてくれるかといえば、必ずしもそうではない場合もありえます。

 やはり税理士や弁護士などの士業に相談して、より客観的なアドバイスをもらえる方が、相談する方にとって安心感があるのではないでしょうか。

 ──実際にどういった方が相談に来て、どんなお話をされるのでしょうか。

 菰田 どちらかというと、相続する側より、される側の人が多いですかね。内容はほとんどが遺言と相続税の話です。

 遺言では「親が遺言書を書いていないから、将来的に相続でもめるかもしれない。どうしたらいいか」といった相談で、相続税では「預貯金や土地の量を見ると、相続税がそこそこかかりそうだけど、親が相続税対策をぜんぜんしていない。今のうちにちゃんと対策したい」という相談。この2種類のお話が多いですね。

相続税対策は暦年贈与・生命保険・不動産

 ──私は40代で、自分が相続する立場になるのは先の話になりそうです。それでも、相続税対策は今から始めた方がいいのでしょうか?

 菰田 持っている資産にもよりますが、相続税対策は時間がかかります。対策は早いに越したことはありません。節税の方法は大きく分けると3つで、暦年贈与、生命保険、あとは不動産を使う方法です。

 暦年贈与は、毎年110万円以内ならお子さまに贈与しても贈与税がかからないので、特に億単位で資産を持っている方は、数十年単位でこつこつ贈与をして相続財産を減らしていくことになります。

 次に生命保険です。現金をそのまま相続すれば全額が課税対象になりますが、生命保険の保険金は、法定相続人1人あたり500万円まで非課税となります。生命保険は加入できる年齢が決まっていて、たとえば一般的な外貨建ての生命終身保険では80歳が上限です。

 そもそも生命保険は若いうちに加入した方が保険料は安くなりますから、将来自分自身が相続する側になることを考えると、残されたご家族の面からは、今から加入しておいた方が得です。

 不動産は、現金と比べれば相続税の評価額が減るから、土地を買えば節税になるということですが、これは富裕層向けの話になりますね。

菰田泰隆さん

 ──お金や土地だけでなく、株などいろいろ持っている人にとってはたいへんそうですね……。

 菰田 相続の難しいところは、たとえ相続される人に投資や不動産経営の経験がなくても、相続財産に株式や賃貸マンションがあれば、そのまま降りてきてしまうところです。相続する方は、本当はお子さんとそのあたりの話もしておくのがいいんでしょうね。

 そもそも、日本は相続税対策がとても効果的な国なんです。欧米に比べると相続税が高いので、節税のインパクトはそれだけ大きくなります。早いうちから準備しておけば、人によっては数百万円、あるいは数千万円の節税もできます。そのお金をお子さまのために使えたら、とてもありがたいですよね。