スペインバルで暮らす猫の名は、ブランコ。スペイン語で「白」という意味です。ドアのすぐ近くに座って、お客さんを呼び込んでいます。

 店主によると、「子猫のときは全身ほとんどまっ白だったけど、大きくなるにつれ黒い部分が出てきた」そうです。白猫の場合、子猫のときに頭などについていた黒い丸模様が、1歳くらいまでに消えてしまうことがあります(ゴーストマーク)。ブランコは、逆に色が出てきたのですね。猫は、不思議なことでいっぱいです。

 さて、ブランコくん。うまくお客さんを呼び込むことに成功すると、休憩時間に入ります。窓の近くの席で、日向ぼっこ。休憩時間になると、きりっとしていた顔が、ほっこりした表情に変わりました。

 さらにお客さんが増えて、店の中がいっぱいになると、外に出て一息入れます。シッポの先は、しっかり黒いのですね。

 アムステルダムは、猫の街です。散策するだけでこれほど猫と出会える都市は、世界の中でも珍しいのです。

 アムステルダムは中心部が運河に囲まれていて、自動車が通行できる道が限られています。さらに自転車が通るのもためらうような路地がたくさんあるので、飼い主さんも安心して猫を外で遊ばせているのでしょう。

 わたしは、月刊誌で「アムステルダムの猫」という特集を担当したことがあります。その中で、アムステルダムの地形について「不器用な女郎蜘蛛がこさえたかのような運河が張り巡らされている」と記しました。いまでも、その表現は我ながらよくできたと思っています。

アムステルダム中央駅と、その南側を取り囲む4本の運河

 アムステルダム中央駅を要(かなめ)として、南側に扇を広げたように水路(運河)がめぐらされ、アムステルダムの街は広がっています。

 アムステルダム中央駅を出て、右手に見える運河がシンゲルです。地図の上を北にして、「し」の字のような形をしているシンゲル運河(4本の「し」の字の最も内側)沿いに歩いていくと、やがて花市場につきます。花市場の周辺には、カフェやパブ、レストランなど、おしゃれな飲食店が軒を連ねています。