やさしい株式投資のハナシ

 資産運用に興味があっても、初心者にとって株式投資のハードルは高いもの。本連載では、現役の証券アナリストが株式投資の魅力や付き合い方をやさしく伝えます。

まるで「泡」がどんどん膨らむイメージの如く

 今回は株式相場とバブルについて考えてみたいと思います。

 株式相場のニュースでも「平成バブル以来30年ぶりの高値」「ITバブルを彷彿とさせる異常な高値」などの見出しが目につくことが多くなっています。バブルについてよく分からないがなんとなく怖そうなイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。

 バブルとは「泡」という言葉が示すとおり「泡」がまるでどんどん膨らむというイメージの如く、不動産や株式の値段、物価が経済の実態をかけ離れて上昇を続ける様をさしています。

平成バブルで日経平均株価は38957円の最高値

 日本でバブルというと1980年代後半に起こった平成バブルのことを思い浮かべる方が多いと思います。平成バブルについては諸説ありますが、1985年9月に米国のニューヨークのプラザ・ホテルで行われた先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議いわゆるプラザ合意がひとつのきっかけであるともいわれています。

 この会議においてドル高で輸出の不振に苦しんでいた米国の主張により、各国が協調してドル安に向かわせる為替操作(介入)を行うことが決定されました。これにより日本は円高により輸出産業の業績が悪化しました。(円高ドル安になると輸出企業が海外で稼いだドルの価値が下がってしまいます。)

 この円高不況に対抗するため日銀は低金利政策を進めました。いわゆる金融緩和です。金融緩和には、ざっくりいうと金利を下げて企業などがお金を借りやすくしたり、国債など中央銀行が資産を買い取って市中に供給し、お金を投資や運用に向かいやすくしたりして景気を良くするという効果があります。

 実際に平成バブルでは土地の値段が高騰し、マイホームは庶民の手の届かない値段となり地上げなどが社会問題化しました。土地を担保に入れて銀行から安い金利で借金をして値上がりした土地でさらにお金を借りて投資をする、このような企業や個人が続出し土地の値上がりが続きました。

バブル経済平成バブルでは土地の値段が高騰し、マイホームは庶民の手の届かない値段となった

 株価も大幅に上昇し、日経平均株価は1985年の12000円台から1989年12月29日の大納会には一時38957円の最高値を付けています。このように「上がるから買う、買わないと周りに取り残されてしまう」というある種の恐怖心や投資家の熱狂からバブルは生み出されます。

今のコロナ禍による株高はバブルなのか?

 この後、バブルはいくつも発生し、2000年初頭のITバブル、2007年に弾けた不動産バブルのサブプライム・バブルがありました。そして今まさに人によってはコロナ・バブルとも名付ける世界的な株高の流れが起きています。

 バブルの歴史として、古くは1600年代のオランダでチューリップの球根が高騰した「チューリップ・バブル」も有名です。つまりバブルは歴史上何度も繰り返されているのです。

 では、今のコロナ禍による株高はバブルなのでしょうか? バブルがいつ弾けるかを予測することは非常に難しいです。そもそも経済の成長を伴った株高はバブルということになるのでしょうか? 

 現在の株高はコロナ禍による景気悪化を食い止めるため各国の中央銀行が歴史上これまでになかった量の資金供給、金融緩和を行っていることが背景となっています。また、現在の株式相場は、新型コロナのワクチンが普及して経済活動が正常化するという期待感のもとに形成されています。さらに、AI(人工知能)や5G(次世代高速通信)といった新たなテクノロジーがまさに普及しつつあることもこの動きに拍車をかけています。

 そのため筆者はあながち今の株式相場が異様なまでのバブル状態であるとまでは言い切れないと思っています。

熱狂と恐怖によって形成されるバブルの相場

 いかがでしょうか。今回はバブルについて概要と歴史を簡単にご案内しました。

 株式相場とは人間の心理そのものですから熱狂と恐怖によって形成されるバブルの相場とはまさに人間の行動が作りあげるということがお分かりいただけたと思います。興味のある方はバブルについて調べてみると意外な発見があって面白いと思います。