組織学習・人材育成の取り組みが「生産性」を大きく左右する時代

 テレワーク環境下で「集合研修」が難しい状況であるこれからの時代、どのような人材育成の取り組みを行えばよいのでしょうか。また、ジョブ型雇用の導入が進めば、そもそも「階層別教育」は時代遅れの取り組みになっていきます。

 これからの時代は、従来の座学でやっていた「知識をインストールする学習」は、動画配信にどんどん置き換えられていきます。かつての「集合研修」も、短時間のオンライン研修が主流となり、内容もオンライン上でのディスカッションが中心になるでしょう。また、年単位でオンライン研修を実施していても、変化の速い現代では、知識がすぐに陳腐化します。そのため、知識のインプットよりも、「早く学んで早く知識を共有する」取り組みが重要です。「短時間」、「高頻度」、「相互共有」が、これからの人材育成における中心的手法になるでしょう。

(1)動画学習で学んだ知識を日ごろの業務で実践、(2)実践結果をチャットやオンラインミーティングで共有、(3)共有した結果をさらに実践してフィードバックを得る。人材育成担当者は、これまでの研修ではなく、「組織的な学びのデザイン」を考えていかなければなりません。

 最後に、参考までにコミュニケーションツール大手のSlack社が実施した、「生産性」に関する意識調査の結果を共有します。調査結果によると、「自社の生産性は高い」と答えた人は、「自社の生産性が低い」と答えた人に比べて、「自社の人材の成長が期待できる」と回答した人の割合が2倍になりました。なお、この調査は意識調査なので、調査結果はあくまでも回答者の主観です。つまり「生産性が高い」と感じる企業には、成長の機会があるということです。

 単に研修を実施するのではなく、組織的な学びの機会をデザインし、従業員のラーニングジャーニーをつくりあげる企業が、これからの時代において生産性を高め、優秀な人材を惹きつけると考えられます。

 いま起きているのは単なる人材育成のDXではなく、人材育成の取り組みを通じた「次の時代の会社づくり」と言えるのではないでしょうか。

著者プロフィール

中野 在人

大手上場メーカーの現役人事担当者。

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。

個人で転職メディア「転キャリ」を運営中 http://careeruptenshoku.com/
他に不定期更新で人事系ブログも運営。http://hrgate.jp/