(舛添 要一:国際政治学者)
2021年に突入した。2020年はコロナに始まり、コロナに終わった1年であった。その意味で暗い1年であったが、今年はどうなるか、内外の情勢について考えてみる。
まずは、最大の懸念材料である新型コロナウイルスはどうなるのか、このパンデミックはいつ終息するのかという問題である。
幸い、ファイザーやモデルナやアストラゼネカなど各種のワクチンが開発され、欧米などでは既に接種が始まっている。この接種が世界中で順調に進んでいけば、新たな感染者の減少につながり、次第に感染が収束していくものと思われる。
問題は、発展途上国をはじめ世界中に接種が拡大するのにどれくらいの時間が必要かということである。集団免疫を獲得するには人口の6割が免疫を持つ必要がある。世界77億人の人類の6割は46億2000万人であるが、それだけの接種人数に達するのは容易ではない。
米国で感染抑制に有効な接種数になるには10年かかる
米NBCニュースによると、アメリカで今のペースのワクチン接種なら、新型コロナウイルスの感染を抑えるだけの接種数に到達するのに10年はかかるという。これは、他人事ではない。日本では、ワクチン接種は東京五輪に間に合うのであろうか。
さらには、ウイルスの突然変異も心配である。昨年末にイギリスで変異種が流行し、世界中がその対応に追われている。南アフリカやナイジェリアでも、変異した新たなタイプのウイルスが確認されている。今のところ重症化のリスクはないし、ワクチンの効果も変わらないと言われている。しかし、今後もまたウイルスが変異する可能性はあり、その特性も予想がつかない。
ワクチン接種が少しずつ行われていったとしても、数カ月でパンデミックが終わる状況にはない。SARSのときは、ワクチンなど開発する余裕もないまま、なぜか突然ウイルスが消えてしまった。そのような僥倖はコロナに関する限り期待しないほうがよい。