2020年は「企業の本質」が見えた年
2020年は企業にとってまさに陰と陽、明暗が分かれる1年でした。変化の激しい現代の性質をとらえ、以前からテレワークなどの柔軟な働き方を採用してきた企業と、伝統的な働き方を維持する企業の間で対応が分かれました。以前からテレワークに積極的に取り組んできたリコーやカルビーでは、緊急事態宣言の際にも全く問題なくスムーズに仕事ができたそうです。一方でもともとIT化が遅れていた製造業や飲食業では、対応が遅れ、業務が一時的にストップする企業もありました。
また、業績面でも明暗が分かれました。飲食業では、回転寿司のスシローが過去最高の売上高を達成。アプリを活用した「お持ち帰り」のデジタル化を早期に進めたことが勝因になったといいます。製造業でも、シャープのマスク製造のように、コロナ禍の新しい需要を捉えて、売上の大幅減少を抑えた企業が生まれました。反対に、人海戦術で営業活動を行ってきた企業では、顧客先への訪問ができなくなり、一気に売上がなくなることも。まさに企業の「先を読む力」や「レジリエンス」が垣間見えた年だったのではないでしょうか。何かが起きた時こそ、企業の真の力が試されるのだと、身をもって理解できました。
「人事が価値創造する時代」の本格到来
2020年も年末を迎え、人事の在り方も年初とはかなり違ってきています。テレワークに戸惑っていた年初と比べ、すっかり「新しい働き方」や「新しい生活様式」が当たり前になりました。インターネットさえつながっていれば、どこでも誰とでも働ける時代の到来。「会社に行くこと」自体が仕事ではない、そう多くの方が実感を持って理解されたのではないでしょうか。
従来の人事は、物理的な会社、あるいは事業所を起点に人員配置を考えていました。採用にしても会社への通勤圏内の方が対象となり、会社の中ではいかに生産性を上げられるかを考え、職場のフリーアドレス化を進めました。しかしこれからは、物理的な場所ではなく、バーチャル空間でつながる「場」が職場になります。実際にVRでつながる職場をつくった企業も現れました。物理的なつながりがなくなる中で、いかに新たな形式の会社をつくるのか。そして物理的な制約がなくなる中で、いかにこれまでの考え方にとらわれず、組織のパフォーマンスを上げることができるのか。まさに人事が積極的に動き、「社会と会社に対して価値創造する時代」が本格的に訪れようとしています。
次回は2021年の人事について予測をお送りいたします。どうぞお楽しみに!
著者プロフィール 中野 在人 大手上場メーカーの現役人事担当者。 新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。 立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。 個人で転職メディア「転キャリ」を運営中 http://careeruptenshoku.com/ |