宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、加入したばかりのiDeCoに関して資産運用の初心者が抱く疑問をもとに、iDeCoの仕組みと「元本確保型」の注意点について説明します。
いったん老齢給付金を受け取るとiDeCoに再加入できない
【質問】
職場でiDeCoの説明会があったっちゃが。自分は今年に入ってから、別の金融機関でiDeCo加入済みで関係ないと思っていたら、知人は「何いっちょると? コロナもあったから、やり替えた方がいいよ! 損しちょるよ! 早めに運用会社変えね!」と言われています。そもそも、コロナの影響でiDeCoは損してるんですか? 運用会社で損をすることもあるのですか?
今回は、個人型確定拠出年金(iDeCo)の何で?の質問にお答えしていきます。
iDeCoが少しずつ普及してきたことによって、勤務先でも組合などを通じてiDeCoの説明会などが見られるようになってきました。退職年齢の上昇によって、まだまだこれからも普及が進むことでしょう。
このように職場での説明会も多くなる中で、「iDeCoって何?」とわけもわからず集められて、何のことかわからないまま聞いている方が大半ではないでしょうか?
ここで少しiDeCoのシステムについて、おさらいをしていきます。
iDeCoは、加入者が60歳になるまでお金を拠出(積み立て)でき、その積み立てたお金を、60歳以降70歳までの間で加入者が給付を受けたいと思う年齢から、定期的に支払われる「年金」と、一括で支払われる「一時金」などを組み合わせて受給することできます。この60歳以降に受け取るお金を「老齢給付金」といいます。
iDeCoの加入期間が10年に満たない場合は、加入期間によって、受け取り可能な年齢が最長65歳まで繰り下げられます。
以上が現在のiDeCoシステムですが、年金制度の機能強化のため、今年5月に確定拠出年金法の一部改正が成立し、改正されました。2022年4月から受給開始上限年齢が75歳に引き上げられるとともに、その年の5月から加入可能年齢が65歳未満に引き上げられます。60歳未満の人も、65歳になるまで掛け金拠出ができますので、老後資金の準備をより充実させることができます。
この法改正の背景には、公的年金の財源を確保しながら国民の老後生活の安定を図るために、事業者には定年延長を推進し、働く側に対しては、定年延長によって、少しでも積立期間を延ばして年金の原資を増大させたいという国の意図があります。
ただ、次のような注意点があります。例えば、現在私の年齢が59歳だとして、来年2021年の60歳時点で老齢給付金の受給を開始したら、その後、再雇用制度などで厚生年金被保険者として働き続けたとしても、iDeCoには再加入できないのです。法改正は2022年5月なので、60歳以降も掛け金の拠出を継続したい場合は、60歳になっても老齢給付金の受給手続きはしないで、運用だけを続ける立場にしておく必要があります。そして、2022年5月以降に掛け金を拠出できる加入者に戻る手続きをすれば、再び掛け金の拠出ができるようになるのです。
法改正は2年後ですが、現在iDeCoに加入中で、60歳以降も給付金を受け取らずに拠出を続けたい方は、何歳まで運用すればいいのか? 今のうちから考えておくといいかもしれません。