金(ゴールド)は安定資産?

 歴史の教科書を紐解くと、第一次世界大戦の前くらいまでは、日本を含む、世界中の多くの国で「金本位制」というお金の制度を導入していたようです。金本位制とは、国が発行するお金(マネー)と金(ゴールド)がいつでも交換できることを、国が保証する制度です。つまり、自国のお金の価値の裏付けとしての金だったのですね。「我が国は金を多く保有しているから、お金をたくさん発行しても大丈夫ですよ」という具合ですね。

 21世紀の現代では、金本位制を導入している国はないと思われますが、それでも金の価値と信用度は揺らぐことはないと思います。と申しますのも、アメリカやドイツなどの各国の政府や中央銀行、IMF(国際通貨基金)などの国際機関は、現在でも、それぞれ数千トンもの金を保有し続けているからです。

 ところで、その昔、多くの国で金本位制を導入したのは、「金の変わらぬ価値=自国のお金の安定」と、「世界の誰もが認める信用=自国のお金の信用度の維持」に注目したからではないでしょうか?
 そして、現在でも多くの国、それも経済力の高い(=GDPが大きい)国の政府や中央銀行で金が保有されています。

 21世紀の現代では金本位制を導入している国はないため、金の保有量に関係なくお金を発行できる状態です。今はこの新型コロナウイルス感染症に伴う経済的な痛みを抑えるために金融緩和をする、つまり国債の発行を増やすことで、お金の量を増やしているのです。

 金の価値は変わらず、その信用度は世界中で変わらぬものがある……。この認識が、今後も変わらないとしましょう。
 すると、金の「価値」は変わらなくとも、金の「価格」は上がる、そんな可能性もあるのではないでしょうか?

 つまり、金の価値は変わらない。しかし、お金を大量に発行し続けることで、お金の価値は下がり続ける、ということです。
 その結果として金の価格が上がる、というのが筆者の認識でした。

あらためて気が付いた……金への投資は意外とハイリスク?

 筆者が金のETFに投資してみて、あらためて気が付いたことなのですが、金には利息・配当金・分配金などのインカムゲインがありません。インカムゲインがあれば、売買に伴う手数料などのコストはインカムゲインで相殺できる可能性があります。
 インカムゲインは、さらに価格変動を和らげてくれるクッションのような役割も果たします。長く保有し続けた場合は、特に。

 加えて、株式とは異なり、金には成長がありません。企業は今、新しい時代を生き抜こうと懸命です。そして、その懸命さは株価に反映します。それが企業の成長です。

 インカムゲインがなく、成長もない……。金とは文字通り、塊(かたまり)に過ぎず、金投資においては時間は味方にならない、といえるのかもしれません。
 インカムゲインと成長があれば、時間は強い味方となります。インカムゲインは積み上がっていくし、企業はより成長していきますから。まあ、中には時の流れについていけず、淘汰されてしまう企業もありますが。

 ということで、金は純粋に価格変動で勝負するしかありません。さらに、金はドルで取引するのが、世界中のルールです。つまり、価格変動に加え、為替変動の影響も受けるのです。

 インカムゲインも成長もなく、ただ、ひたすら価格変動と為替変動に晒されるだけ、それが金への投資というのが、実際に投資をしてみて得た、筆者の感想です。

 もし、筆者の感想が妥当なものだとしたら、金への投資は国内企業への投資よりもリスクが高いともいえるかも知れません。
 もっとも、企業には倒産リスクはあっても、金の価値がゼロになってしまうことはないと思われますが。

 ところで、投資信託(ファンド)の中には、金だけを投資対象とし、為替ヘッジを行っているものもあるようです。つまり、為替ヘッジ付きの金投資ということになりますので、為替変動リスクをある程度、押さえることができるようです(為替ヘッジは、為替変動リスクを完全に排除できるものではありません。過剰な期待をなさらないように)。

 為替ヘッジには「ヘッジコスト」がかかります。ヘッジコストとは、通貨同士の短期金利の差(金投資の場合なら、円とドルの短期金利の差)がコストになります。そして、そのコストはファンドの基準価格に反映します。

 かつて、金本位制という名のもとに、各国のお金の価値の裏付けとして、その価値とともに、高い信用力のある金。世界共通の価値を誇る投資資産のハズですが、その割に、「リスクが高い投資資産では?」という疑問が、筆者は拭い切れずにいます。

ドルと金金投資では為替の動き、つまりドル高かドル安かが価格に影響する