現金のリスク

 「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、ライフプランのための資産運用において、金(ゴールド)に投資するのは有効なのかどうかを考察します。

 まだまだ世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症。アメリカのトランプ大統領が罹患する事態にまで陥りました。先行き、どうなるのか、予断を許しません。

 ところで、新型コロナウイルス感染症により世界経済が打撃を受け、株価に大きく影響したのが、およそ8カ月ほど前になると思いますが。
 読者の皆さまは、筆者の『【緊急アンケート】新型コロナウイルスと資産運用②』をご覧いただいていらっしゃいますか?

 その中で、以下の問いがあり、筆者はこのように答えています。

④ こんなタイミングだからこそ、注目したい金融商品や投資手法はありますか?
・リスクターゲット型のバランスファンド。
・トレンドフォロー型のバランスファンド。
・金(ゴールド)のETF。

 「注目」だけにとどまらず、筆者が実際に投資したのが、「金(ゴールド)のETF」です。

 そこで本稿では、まず筆者による金(ゴールド)への投資を振り返ります。そして、振り返りにとどまらず、ライフプランの中に金への投資を組み込むべきか否かを考えてみたいと思います。

 ライフプランの中に金への投資を組み込むとは、どういうことでしょうか? 例えば、教育資金の準備を目的に、あるいは老後資金の準備を目的に、金にも投資するという意味です。

筆者が金に投資をしたのは「有事の金」だから?

 「有事の金」という表現があるようです。普段は「何か起きたときのために金を持っておくといいですよ」くらいの意味で使われることが多いようですが、筆者が仄聞したことによれば、この有事とは「核戦争」を指しているという説があります。

 1960年代から1980年代にかけて、「冷戦」といわれる時代がありました。当時の超大国、つまりアメリカとソ連がにらみ合っていた状況です。この冷戦が現実の核戦争に発展した場合でも、「お金(マネー)は焼けても、金(ゴールド)なら残るし、自身の名前を刻印できる」と欧州の富裕層は信じていたそうです。

 現在のように、世界中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい続けている状況は、戦争とは異なります。とはいえ、多くの人たちが命を落とし、経済に大きなダメージを与え続けています。お札が燃えてしまうような状況ではないにせよ、今のコロナ禍を「有事」と表現しても差し支えないかもしれません。

 長々と能書きを垂れてしまいました。
 しかし、筆者が金に投資した目的は、「有事」とは別の視点にあります。

金に投資をしたのは、世界中のお金の価値が下がると思ったから

 新型コロナウイルス感染症が蔓延し、世界的に経済活動が大きく落ち込んでいます。コロナ対策のため、世界中の国々で金融緩和や財政出動を余儀なくされました。この金融緩和の影響によって、筆者は「いずれ、世界中のお金(マネー)の価値が下がるのでは?」という思いが込み上げてきました。

 お金の価値が下がる、すなわち、インフレを予想しました。
しかし、もし、インフレを予想するなら、価格が物価に連動しやすい株式への投資も選択肢のひとつになるはずです。

 とはいえ、新型コロナの影響で株価が暴落した当時の状況を踏まえると……下落した株価が、いつ反転するのか、その時期が見極めきれずにおりました。
 そこで筆者が注目したのが「金(ゴールド)」だったのは、冒頭に述べたアンケートの通りです。

金(ゴールド)インフレになって、金の価格が上がる?