南太平洋の美しい島々が毎年少しずつ中国の手中に収まりつつある(写真はバヌアツの港)

 2020年2月に、中国海軍駆逐艦などの4隻が、太平洋の日付変更線を超え、41日間、1万4000海里を航海した。

 解放軍報は、今回の行動を「米国覇権への挑戦であり、今後回数を増やしていく」と伝えた。

 同グループがグアム西方約380海里の海域で、偵察飛行中の米海軍「P-8」哨戒機にレーザー照射を行ったことに、米国防省は、危険行為であると中国側に抗議した。

 平時において、米中間の軍事的な鍔迫り合いが、南シナ海を超え、西太平洋にまで広がっていることを示す事件であった。

米・豪・英・仏との衝突の兆し

 中国は、南太平洋に広域にわたって点在している多数の島嶼(トウショ)国家と外交関係を結び、台湾とそれらの国家との国交を終わらせた。

 そして、多くの中国人を移住させ、経済的支援という“罠”を仕掛け、返済できないほどの大きな債務を負わせた。その見返りに軍港として使用できる港を建設しようとしている。

 ほとんどが10万~20万人規模の国家である。

 その中に、多くの中国人が移住して来れば、国ごと乗っ取られるという脅威となる。さらに、これらの動きに中国軍海軍艦艇が連携して、活動を活発化させている。

 つまり、中国の民間レベルの工作を、軍が背後から支えて、暗黙の睨みを利かせているのだ。

 中国は、これらの島嶼国家に進出し、領域を逐次拡大して、軍事的拠点として利用することを企図しているようだ。

 その理由には、米軍と対峙する中国のA2/AD(接近距離・領域阻止)戦略に含まれる第2列島線内における領域拒否を実行するために、南太平洋島嶼国家に、中国の軍事拠点を構築する必要があるのだ。