ポリスチレン系プラスチック

 プラスチック部品の代表格としてもうひとつ、ポリスチレン系プラスチックがあります。これにはスチレンだけから作られるポリスチレン・ホモポリマーと、ABS樹脂のようなスチレンに他のモノマーを加えて作られたターポリマー(3元共重合体)など、非常に多くの種類のプラスチックがあります。

 一般にポリスチレン系プラスチックは、耐熱性はそれほど高くありませんが、熱安定性がよく、酸やアルカリにも侵されず、価格が安く加水分解もされないため、日用品から工業用品まで幅広く使用されています。

 耐熱性に難点があるため、ポリスチレン系プラスチックは自動車部品としてはあまり採用されず、むしろ耐薬品性、高い電気特性、寸法精度の高さ、加工性のよさから家電製品に多く用いられてきました。これからは電気自動車の普及拡大に伴って、自動車業界でもポリスチレン系プラスチック性の部品の採用が今まで以上に増えることになると考えられます。

 すでに現状でも多く採用されているのがABS樹脂です。これはアクリロニトリルとブタジエン、スチレンの3種類のモノマー(重合を行う際の基質。単量体。モノマーが多数結合した高分子がポリマー)から作られたターポリマーです。

 ポリスチレンの持つ剛性、電気特性、耐熱劣化性、表面特性を有しつつ、さらに耐衝撃性、耐熱性、耐溶剤性も備えた非常にバランスの良いプラスチック部品です。ただしやはり耐候性には難があります。

 ABS樹脂は射出成型に最も適したプラスチックとされており、大量生産による部品の製造にも適しています。今では運転手の安全を守るシートをはじめ、センターコンソール、グローブボックスなど広い範囲で部品として用いられています。

「車体の軽量化」は最大のテーマのひとつ

 地球温暖化の弊害は一刻の猶予もならない状況を迎えています。環境規制の一段の強化は避けられません。自動車業界が生き延びるには、世界的に高まる電気自動車や燃料電池車への移行を急ぐしかありません。そこでは「車体の軽量化」は最大のテーマのひとつであり、プラスチック材料のさらなる活用こそ人類に求められている新たな技術革新への挑戦なのです。

 大手化学メーカーの中でも、自動車向け高機能プラスチックに強い、三井化学(4183)、信越化学工業(4063)、東ソー(4042)、リケンテクノス(4220)、日精樹脂工業(6293)、信越ポリマー(7970)に注目しています。

【図表1】三井化学(4183)月足、2012年~
三井化学(4183)月足、2012年~
【図表2】日精樹脂工業(6293)月足、2012年~
日精樹脂工業(6293)月足、2012年~