いまこの銘柄が面白い

 新型コロナウイルスの経済への影響が広がり、自動車業界へのダメージも徐々に拡大しています。自動車メーカーが生き延びるには、世界的に高まる電気自動車や燃料電池車への移行を急ぐしかなく、そこでは「車体の軽量化が最大のテーマのひとつ」と鈴木氏は指摘します。自動車に用いられるプラスチック部品の変遷や注目銘柄について解説していただきました。

自動車業界の回復は鈍いがいつかは戻る

 鈴木一之です。コロナウイルスの経済への影響が広がってきました。観光会社や外食ビジネス、航空会社は世界規模で厳しい人員削減が実施されています。

 自動車業界へのダメージも徐々に拡大しています。サプライチェーンが寸断されたことから自動車工場は世界中で操業停止に追い込まれ、ようやく工場の稼働が再開されたばかりです。しかし今度は自動車が売れません。人々は先行きがわからないため消費を抑えています。

 現在の状況がいつまで続くのか、誰にもわからない点が人々の心理を必要以上に委縮させています。それでも、回復の足取りは鈍いかもしれませんが、耐用年数がある以上、いつかは自動車にも需要が戻ってくるはずです。人々の関心が自動車に向かうのは、ひょっとしたら最後になるかもしれませんが、しかしいつかは戻ります。

プラスチックは車体を軽くし、ガソリンの使用量を減らす

 その際に起こり得る変化は、自動車メーカーの抜本的な変革です。現在の自動車会社とはまったく異なった姿かたちになっているはずです。環境規制に対する対応策はそれほど急務となっています。

 米国のカリフォルニア州は9月23日、2035年までに州内で販売されるすべての新車を排気ガスを出さない「ゼロエミッションカー」にすることを義務づけました。ガソリン車の新車販売が禁じられるだけで、住民によるガソリン車の所有や中古車の販売は許される模様ですが、発表直後の衝撃は非常に大きなものでした。

 欧州や中国も似たような環境規制を強めており、エコカーの普及に弾みがつくと見られます。これによって自動車の車体軽量化のニーズが一段と高まることになりそうです。自動車部品にプラスチックを採用する事例がこれまで以上に増えることでしょう。

 石油由来のプラスチックは環境汚染の元凶とも見られますが、同時に自動車部品に用いられれば車体を軽くしてガソリンの使用量を減らします。悪い点ばかりではありません。近年の自動車産業の発展に大きく貢献したのは、材料とエレクトロニクスの発達とされています。中でも材料面でのプラスチックの果たした役割は極めて大きなものがあります。

 3万点にも及ぶ自動車部品の中でプラスチック製部品の占める割合は、2010年には10%に達したと見られます。環境規制の厳しい欧州では、これが十数%に達していると推定されます。トヨタ自動車など自動車メーカーの中には、プラスチックの成分配合にまで関わってさらに高性能なプラスチック部品の開発にも乗り出している企業もあります。