Sansan株式会社は2020年9月30日、コロナ禍における「企業の商談・人脈・顧客データに関する意識・実態調査(2020年)」の結果を発表した。調査期間は2020年9月5~6日で、仕事上商談機会がある全国の20~60代の会社員600人と、経営者・役員400人の合計1,000人から回答を得た。これにより、名刺交換枚数の減少がもたらす業績への影響と、名刺情報を蓄積する重要性が明らかになった。

オンライン商談は緊急事態宣言後2.5倍に増加

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、商談のオンラインが急速に進んでいる。このような状況を受け、かねてより名刺管理サービスを展開してきたSansanは、ビジネスパーソンの商談状況や、企業の顧客データ基盤の構築における、新型コロナウイルス拡大の影響や実態を調査した。

 まず、「緊急事態宣言前後におけるオンライン商談の実施状況」を尋ねた。すると、緊急事態宣言前はオンライン商談の割合が17%だったのに対し、緊急事態宣言後は42%へと、約2.5倍に増加したことが判明した。緊急事態宣言前後の名刺交換枚数は16.5枚から12枚となり、約3割減少している結果となった。

 また、商談のオンライン化が進む一方で、課題と感じることとしては、50.2%が「対面よりも商談の質が下がる」、17.1%が「対面よりも受注率が下がる」と回答。これらの課題により、「ビジネスの機会損失が発生しているか」と聞くと、「発生している」が28.8%、「発生する不安を感じている」が47.9%と、合計76.7%がオンライン化によるビジネス機会損失を実感していることが判明した。

「顧客データの利活用」への意識が高いと、業績が良い傾向が

 急速な商談のオンライン化にともない、顧客データを蓄積・管理・活用できなくなったという意見も多いなか、「業績の良い企業の割合」を確認すると、顧客データに対する意識が「高い」企業は、そうでない企業と比べてコロナ禍でも1.6倍業績が良いことが判明した。さらに、「今後1年の見通しが良くなる」という回答も、1.3倍高いことが明らかとなった。顧客データへの意識が高いビジネスパーソンが在籍する企業ほど今後の見通しも良く、顧客データへの意識と業績には、一定の相関関係がある可能性が示唆された。

現場社員の実態と経営層では「名刺管理状況」に顕著な意識差

 続いて現場社員と経営者の双方に、「オンラインでも顧客データを蓄積・管理・活用しているか」について尋ねた。すると、「できている」と回答した現場社員はわずか10.8%だったのに対し、「自社社員はできている」と回答した経営層は46.5%におよんだ。現場の実態と、経営層の意識との間には顕著な差が生じていることが判明し、経営層にとって新たな課題が顕在化する結果となった。

名刺交換枚数の減少により、100名規模の企業では年間約21.5億円の損失と推計

 新型コロナウイルスの影響がなかった場合にビジネスパーソンが1人あたり約201枚の名刺交換をしたとして、それにおける経済的価値を同社が独自に算出した。その結果、名刺1枚あたりの経済的な価値は約37万円と推計された。ここから緊急事態宣言後の実際の平均名刺交換枚数をもとに、年間の経済損失額を試算すると、常用雇用が100名以上の企業の場合、1企業当たりの平均年間経済損失額は約21.5億円となるとの見解を表明した。

 社会全体でのオンライン化が急速に進むニューノーマル時代において、「データ」の利活用は企業の業績にかかわる重要な指標のようだ。このような状況のなか、社員一人ひとりがデータ管理への意識を高めることが、今後ますます必要になっていくだろう。

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HRプロ編集部

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