南西諸島方面から模擬攻撃と情報収集

 図1は、2018年4月に中国空軍機がとった行動であり、爆撃機・戦闘機・情報収集機の航跡である。

 この行動の狙いは、台湾に爆撃機の行動を長時間見せつけ、「爆撃機は、いつでも台湾をミサイル攻撃できるぞ」と恫喝しているのである。

「H-6」爆撃機2機①が、戦闘機2機(「Su-27」と推定)に掩護されて、南西諸島の宮古海峡上空を横切って南下した。

 戦闘機④は当初、爆撃機を守るために随伴し、戦闘行動半径に近づいたので、反転して帰投する。

 途中で帰投するのは、これ以上飛行すれば燃料切れで、基地に帰投できなくなるからだ(戦時では、空中給油機から給油を受けた戦闘機が作戦終了まで爆撃機に随伴する)。

 爆撃機①は、宮古海峡方向に戻らないで、そのまま右旋回飛行して、図の点線の通り本土に帰投した。

「Y-8」②および「Tu-154」情報収集機③は、爆撃機に追随して飛行し、台湾に向けて飛行した。

 この収集機は、中国爆撃機を撃墜するための台湾防空ミサイルなどの動きや能力について情報収集を行った。

 具体的には、防空ミサイル部隊の捜索レーダー、射撃管制レーダー(ロックオンなどの動き)の電子情報(活動しているレーダーの位置、種類、周波数、電磁波の特徴)を収集したと推定される。

 なぜこのような情報収集が必要なのかというと、戦時に、これまでに集めた電子情報、つまり、対レーダーミサイルの射撃に必要なデータを使って、台湾のレーダー基地に対して、ミサイルを打ち込むためである。

 また、台湾の防空戦闘機のスクランブルの反応と戦闘機の電子戦能力についても、情報収集している。

図1 2018年4月、爆撃機を含む中国空軍機の行動

出典:防衛省統合幕僚監部報道発表資料に中国軍機シルエットを追加

*実線は、中国軍機が実際に飛翔した経路で、点線は、中国軍機が帰投のために飛行したと推定される航跡である。