「ウイズコロナの時代」は「ニューノーマルの時代」そのものだ。人口減少に伴う市場の収縮など、以前から予想されていた環境変化が加速、企業に、そして個々人に「生き方の問い直し」を迫る。こうした中、企業経営者はどのようにリーダーシップを発揮するべきなのか。パーソルホールディングスを率いる水田正道社長は、「今こそ企業のビジョンが重要」と語る。

パーソルホールディングス株式会社 代表取締役社長 CEO 水田 正道 氏

10年後に起こるべき変化が一気に押し寄せた

――新型コロナウイルスの感染拡大で、今感じていることは。

 働き方、労働人口の不足、市場の縮小など、予測されていた変化が一気に押し寄せた、そんな印象を持っています。終身雇用や年功序列も、「2030年ぐらいまでにはなくなる」と言われていたものが、10年前倒しで起ころうとしています。コロナ以前と同じやり方ではビジネスモデル自体が成り立たず、イノベーションを起こさなければ存続すら危ぶまれる、そんな企業も少なくありません。

――緊急事態宣言を受け、多くの企業がテレワークに取り組んだ。これも「将来的には」という温度感の企業が多かったが。

 テレワークは、まさにタイムスリップのように対応が急激に進みました。ただ注意すべきは、単にオンライン会議システムを導入したからテレワークができるようになる、というわけではないということです。例えばマネジメントでいえば、勤怠管理や評価をどうするのかということです。ネットワークやアプリにログイン・ログアウトした時間を出退勤の時間として記録するツールもありますが、それがすべてを解決するわけではないと思います。多くの日本企業では、社員は依然として時間の切り売りで働いています。見方を変えれば、会社に来て席に座っていれば給料がもらえるとも言えます。テレワークを導入するのであれば、そもそも何をもって成果と見なすのか、そこから問い直す必要があります。年功序列型の「課長」「部長」という肩書きによるマネジメントも通用しなくなるでしょう。企業によってはその管理職のポストそのものが不要になるということもあり得ます。

――「ウイズコロナ」時代には、企業のビジネスモデルそのものが見直しを迫られるという意見については?

 当社グループでは、新型コロナウイルス対応として、業務の特性を鑑みながら、全社員に対するテレワーク・時差出勤の推奨などの施策を進めています。大手企業の中にも、こうして在宅勤務を数千人規模で行うところがあります。このような動きが広がると、都心のオフィスに人が少なくなるという現象も出てきます。それによって都心の飲食店のランチの売り上げや、スーツの売り上げが減る。出張に行かずにオンライン会議システムで済ませることが多くなれば、飛行機や新幹線にも乗らないしホテルにも泊まらない。経済を回す消費がどんどん減ってくる。そうした連鎖反応が起こります。

 ただし、そうなってしまったからには仕方がありません。その中でどうやって生き残るかを考えていくしかありません。大切なのは、今回の件にとどまらず、ビジネスは今後もさまざまなリスクにさらされるということです。その点で自身の反省もあります。リーマンショックの時には、「こんな苦労は二度としたくない。さまざまなリスクへの備えが不可欠だ」と思い知らされたにもかかわらず、今回も大きく揺さぶられることになってしまいました。