「利回り」で考える

 宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、「定期預金でお金が増えない」と悩む相談者に対して、どのような基準で運用商品を選べば良いか、考え方を提案します。

昔は定期預金でお金が増えたのに……

【質問】
銀行に預けていた100万円定期預金! 1年後に満期になるけど、金利を見て愕然……。利息がたったの100円。これじゃ自動販売機のコーヒーも買えん。しかも、そこから税金も取られる。100万円預けて利息が100円って、何かのミス? ありえんわ! 窓口で頼まれたから預金したのに。いまの時代、もうちょっとましな商品はないですか?

 このような相談はよくあります。この相談にお答えする前に、日本の置かれた現状を知っていただきたいと思っています。

 昔の日本は経済に活気があり、インフレで物価も年々上がっていて、預金金利は6%くらいありました。今回の相談者は30歳代の方でしたが、そういう時代背景を知らない世代だと思います。
 この時代背景を知っているかどうかで、お金を増やすための「商品の選別」に違いが出てくると考えています。そのことは後に触れることとして、まずは昔の時代背景についてたどっていきたいと思います。

 日本の金利が低下を始めて、何年になるでしょうか? これは、株価、為替、金利の推移をたどれば、おのずとわかってきます。
 元号が昭和から平成に変わる頃の数年間は「バブル経済」と言われ、1989年12月末には日経平均株価が史上最高値の3万8975円を付けました。当時の基準金利(当時は「公定歩合」。現在は「基準割引率および基準貸付利率」)は6%。ドル/円の為替レートは140円前後でした。
 ところが、1991年に湾岸戦争が起こり、日本では景気後退が始まり、バブルは崩壊。金利はというと、日銀は基準金利を1991年に6%から5.5%に引き下げました。そこからわずか4年あまりで、1995年には基準金利が1%を切る状況に転じてしまいました。

 現在、日経平均株価は約2万3000円、基準金利0.3%、為替は105円となっています。
 これも経済再生のためでしょうか、経済の低迷に対して株価を上昇させるために、副作用も考えられる「マイナス金利政策」を、日銀は2016年から採るようになりました。
 近年の日銀は、国債の大量購入に加え、株式市場ではETF(上場投資信託)などを買うという、金融市場の需要と供給のバランスを度外視しているかのような政策を行っています。これら日銀の金融政策が、アベノミクス「3本の矢」のひとつとして市場を支え、株価の上昇と為替の円安を生み、それが今の経済再生につながっているのです。わずか30年前にはとても考えられなかった話です。
 今後は、急なインフレによる物価上昇が起きない限り、今のゼロに近い金利水準が上がることはないと思っていいでしょう。

日本銀行マイナス金利政策に踏み出した日本銀行