今から20年前の平成3年(1991年)、自衛隊創設以来初の国外での実任務となったペルシャ湾での機雷の除去作業に、掃海艇4隻、掃海母艦1隻および補給艦1隻、隊員511人からなるペルシャ湾掃海派遣部隊が派遣された。

国際貢献の端緒を開いた湾岸掃海

 落合畯1等海佐(当時)を指揮官としたこの部隊は、4月下旬から10月下旬までの6カ月間海外で行動し、北部ペルシャ湾において34個の機雷を処分して無事に任務を完遂した。

 それまで我が国は、湾岸での平和回復活動へ総額130億ドル(便宜上1ドル100円換算で1兆3000億円相当)に上る資金支援を行ってきたが、国際社会からは「命の危険を伴う人的貢献は他の国に任せ、自分は金だけで済ませようとしている」と言われ、巨額な資金提供も「Too little Too late」と厳しく非難されていた。

 そして掃海部隊の湾岸派遣と任務完遂が、我が国の国際社会における信頼回復とともに国際貢献の端緒を開く契機となった。

 ちなみに湾岸掃海に要した増加分の費用は、130億ドルの1000分の1程度と言われている。

 20年を経た今日、改めて湾岸掃海の使命について考察し、さらに今後掃海部隊に求められる要件について記す。

湾岸掃海の使命についての考察

湾岸掃海の使命

 湾岸掃海の法的根拠は、自衛隊法第99条の規定に基づくものであり、その使命(目的+任務)は、「我が国船舶の航行の安全を確保するために、ペルシャ湾における機雷の除去およびその処理に当る」ことであった。

 当時、政府は、掃海部隊の派遣決定に際し、上記使命に関わる次の政府声明(抜粋)を発表している。

●ペルシャ湾は、世界の原油の主要な輸送経路の1つに当たっており、この海域における船舶の航行の安全が1日も早く回復されることが、国際社会の要請となっている。

 この海域における船舶の航行の安全の確保に努めることは、今般の湾岸危機により災害を被った国の復興等に寄与するものであり、同時に、国民生活、ひいては国の存立のために必要不可欠な原油の相当部分をペルシャ湾岸地域からの輸入に依存する我が国にとって、喫緊の課題である。

●国際社会において大きな責任を果たすことが求められている我が国としては、資金、物資の面での支援のみならず、これらと併せて人的な支援を行っていくことが必要であることは、広く御理解をいただいているところであるが、今回の措置は、船舶の航行の安全の確保および被災国の復興という平和的、人道的な目的を有する人的貢献策の1つとしても、意義を有するものと考える。

 掃海派遣部隊に付与された使命の目的は、明らかに「我が国船舶の航行安全確保」であるが、国としての上位目的は、上記政府声明に見られる通り「被災国復興に寄与」という平和的・人道的目的が国内外向け大義名分として強調されている。