自治体作成の3つの名簿が連携できない現実
災害が起こった場合、社会の中で必要な支援を受けて、その支援に基づいて生活を復旧させていくことが必要になる。どこにどのような支援を必要としている人がいて、その人に必要な支援をどうやったら届けることができるのか。そして、それをいつ考えればいいのか。
その中でも、支援のニーズと支援のリソースを正確に把握し、ニーズとリソースを正確につなげるということは難しい問題だ。一般的には、自治体を中心として防災計画が立てられ、自助・共助・公助を組み合わせた支援が予定されている。
しかし、支援に最も必要なニーズを把握するのに、最も重要なパーツである「名簿」が機能していないことがある。先にも述べた岡山県倉敷市真備地区で発生した被害を調査したときのことだ。
経験されたことのない人には想像するのが難しいかもしれないが、被災地ではたくさんの名簿が作られている。公的な性質をもったものとしては、避難に関して支援が必要な人を事前に把握する「避難行動要支援者名簿」、避難所が開設されて作成される「避難所名簿」、主に罹災証明等の発行に利用される「被災者台帳」の3つがあげられる。これらの3つの名簿はそれぞれの目的に応じて作成されるため万能ではない。
たとえば、避難行動要支援者名簿は、自治体ごとに「要支援者」の定義が異なる上、住民に手を挙げてもらって作成されるため、要支援者を網羅できていないこともある。避難所名簿は、自治体によって作成された受付名簿が支援を行う者に提供されないケースがある。
被災者台帳は世帯単位で捕捉されているにすぎないし、罹災証明は居住する物件の損壊状況について証明をするものなので、その人がどのような被害を受けたかということを見ていないケースが多い。しかも、これら3つの名簿は相互の関係性を有しておらず、要支援者がどこに避難していて被害状況はどうか、ということをつなげて把握することができない。