コロナ禍が突きつけた「複合災害」への対処

 従来の災害においては、どのような被害が発生し、どのような支援を継続的に提供していくかという問題を解決することが求められてきた。これに加えて、これまでの課題は、災害発生初期の支援だけではなく、1カ月後、半年後、1年後、10年後といった長い目線で被災地の生活をどのように支えるかという、災害の発生から比較的長い視点での支援に関するものだった。

 一方、令和2年7月豪雨では、新型コロナウイルスの感染はまだ収束しておらず、避難所での感染予防をはじめとした新しい対策が各所で検討されている。この感染予防の観点から問題になるのが、従来の避難計画どおりに避難所への避難が行えるのかということだ。

九州を襲った今回の豪雨では、避難所のソーシャルディスタンス確保が課題になった(写真:ロイター/アフロ)

 避難所で適切なソーシャルディスタンスを確保し感染を予防するためには、避難所の想定収容人数や設備といった観点から再検討が必要になるのではないかという指摘が専門家から出ていた。ある災害が発生する前から、別な災害に関する情報を収集して、それらの複数の災害に関する情報を有効につなげる必要が生じている。

 解決策の1つとして、個別の避難が挙げられている。避難が本当に必要な人だけ避難所に移動し、自宅などでの避難行動で足りる場合には自宅で安全確保を徹底するということが提案されている。

 ここに新しい問題が生まれる。避難が必要かどうかを各自が個別にリスクの算定をしなければならないということだ。果たして、このようなリスクの算定を個人ができるのだろうか。

 では、どうすればいいか。1つ考えられるのが、今どこにいてそこがどういう場所なのかというような地理空間情報や、その人の要支援性といった情報を一元的に集めて、リスクを災害支援の司令塔となるべき自治体が相互比較することだ。

 自治体が作成する名簿に、こういった情報を付加し、必要な人に必要な避難方法を指示するという一元的な指令をすることだ。それなしには、複合災害に対処することは困難だろう。

 そうした情報には、コロナウイルスに感染した場合の重症化リスク(基礎疾患の有無)や避難所生活を継続した場合のリスク(常備薬の継続的な提供等)への対処も結果的に含まれることになり、支援が充実することになる。