株式会社エス・ピー・ネットワークは2020年5月、新型コロナウイルス感染症の拡大防止措置として導入が増える在宅勤務(テレワーク、リモートワーク)について、実態調査の結果を発表した。この調査は、(1)2020年4月24日~26日に実施した全国の在宅勤務実施企業に勤める会社員および役員(20~64歳)の男女1,074名を対象としたアンケート、(2)2020年1月~4月の期間内に同社の第三者内部通報窓口「リスクホットライン」に寄せられた通報から新型コロナウイルス関連の内容に絞って無作為に抽出した50件、の2つを分析したもの。これにより、新型コロナウイルス感染症に伴う働き方の変化や、テレワークの制度などに関する実態が明らかとなった。

3割以上が「在宅勤務制度が整っていない」まま在宅勤務を開始

 働き方改革推進により、「新しい働き方」の一つとして昨今注目が集まる在宅勤務(テレワーク)だが、制度として在宅勤務を整備している企業はどのくらいあるのだろうか。現在、在宅勤務を行っている人に、「在宅勤務制度の有無」を聞いた。

 その結果、65.8%の企業がすでに「在宅勤務制度がある」と回答。一方で、正式に制度として整備されていない状態で在宅勤務を行っている人が34.2%いることも判明した。国や自治体の緊急事態宣言などに応じるため、企業が急ぎで在宅勤務へ移行したことをうかがわせる。

新しい働き方として在宅勤務の定着に期待

 次に、「新型コロナウイルス感染症の収束後に在宅勤務を継続して実施したいか」を聞いた。すると「継続したほうがよい」(34%)と「部分的に継続したほうがよい」(39.9%)が合計で73.9%にのぼった。

 また、「在宅勤務での働きやすさ」と「新型コロナウイルス収束後の在宅勤務の継続」の関係を示したグラフでも、「在宅勤務により働きやすくなった」と回答した人のうち、89.5%に上る人が収束後も在宅勤務を希望。「在宅勤務により働きにくくなった」と回答した人でも、「継続した方がいい」、「部分的に継続した方がいい」の合計が62.4%と6割を超えた。働きにくさ以上に、在宅勤務にメリットを感じていることが伺える。

在宅勤務継続の課題は「労働環境の整備」

 続いて、月に1回以上在宅勤務を行っている人に「在宅勤務時の障害」について聞いた。その結果、最も大きな障害は、紙の資料が手元にないなど「業務上必要な資料がない」で37.5%、次いで「社内サーバーへのアクセス権限がない」で29.9%となった。

 また、セキュリティや情報管理面に関しては、フリーコメントで以下のような回答が得られた。

・在宅勤務時は自宅のパソコンを利用しており、通信セキュリティの安全性に不安がある
・個人情報や一定の資料に出社しないとアクセスができない(認められていない)
・自宅での通信速度が遅く、スムーズに仕事ができない

 さらに、「迷惑メールが増えた」との回答もあり、既にセキュリティ上のトラブルが発生しているケースもあるようだ。テレワークを推進するには、企業が主体となり情報管理やセキュリティ対策を実施することが重要だと言える結果だ。

 働き方改革推進や新型コロナウイルス感染症拡大の防止措置として広がりを見せる在宅勤務。新しい働き方として定着をはかるためには、制度の整備や実施時の課題を一つずつクリアにすることが必要となりそうだ。

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HRプロ編集部

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