*写真はイメージ

 今から5~7万年前のことです。ホモ・サピエンスがアフリカを出て世界各地に散らばりはじめました。現在の研究では、もともとアフリカを居住地としていた人類のうち、約5000人がこの「出アフリカ」に加わったとされます。

 そこから人類は、数万年の歳月をかけて世界中に居住するようになります。では、なぜ人類は出アフリカをすることになったのでしょうか。

種の生存のための「出アフリカ」

 その原因は諸説あります。「アフリカの気候が寒冷化したから」とか、「食料が不足したから」などと説明されることが多いのですが、私は、人類という種が生き延びるために、さまざまな場所に居住するという選択をしたのではないか、と考えています。

 もし、いくつもの地域に人類がバラバラに居住していたなら、ある地域の人類が病気や災害、飢餓などで滅亡しても、別の地域の人類は生き延びることができます。人類が居住するようになった気候区は本当に多様であり、ある気候区で疫病が発生したとしても、その地域で定住した人々と他の地域に住む人類が没交渉であれば、他地域の人類に被害は及びません。すべての種の最大の目的が「種の保存」であるということを考慮に入れれば、より多様な居住空間を求めてアフリカを出ていくという選択は、きわめて理にかなっていたはずです。