コレラは、古くから人類を苦しめてきた病気です。しかし、ずいぶん長い間、インド周辺における風土病という存在でした。
ところが19世紀になり、ヨーロッパ人が大量にインドに訪れるようになると状況は一変します。何度も何度も、それまでにない規模で大流行し、パンデミックが起こるようになるのです。というのも、19世紀には、ヨーロッパ船、とくにイギリス船が世界中で航行するようになっていました。それに伴う人間の移動によって、病原体が世界中に撒き散らされるようになったのです。
それは鎖国政策がとられていた江戸時代の日本も例外ではありませんでした。日本でも大流行し、コレラに感染するとすぐに死んでしまうということから、「コロリ」と呼ばれるようになったのです。
19世紀のグローバリゼーションは、コレラを風土病からパンデミックを引き起こす世界的な伝染病へと変えてしまったのです。
コレラの特徴
コレラは、Vibrio choleareという細菌、いわゆる「コレラ菌」によって引き起こされる病気です。この細菌はヒトの小腸に定着・増殖し、毒素を発生させます。細胞内に入り込むことはなく、ヒトにしか感染しません。
ただこの毒素によって、痛みを伴わない下痢と嘔吐が突然生じます。重症の場合、下痢によってたった1時間で1リットル以上の水分が失われるそうです。そのため極度の脱水症状に陥り、重症化すると死に至ってしまうのです。