「伝える」意思のないファンドはダメ

 ──一番好きなアクティブファンドはどれですか?

 rennyさん いま保有しているファンドは全部好きです。情報開示姿勢とかを考えると鎌倉投信は特にいいですね。スパークスは銀行や証券会社で販売しているので、現状のような環境ではどうしても資金流出が増えてしまうのが難点ですが、運用そのものや情報開示姿勢などは、やはり非常に優れていると思います。

 ──反対に「買ったけど失敗したなぁ」とか、「興味持てないなぁ」というアクティブファンドは?

 rennyさん やっぱり投資家に自分たちの想いや行動を伝えようという意思が感じられないファンドには興味ないです。前に保有していたファンドですが、運用レポートで具体的な企業名を出さずに、「自動車メーカー」「化学メーカー」など、なぜか業種で表記するファンドがありました。そんなの組入上位10銘柄とかを確認すればすぐ企業名なんてわかるのに。

 ──なんでそんな変なことをしているんですかね?

 rennyさん さぁ。それでそのことを指摘しようと運用会社にメールを送ったら、「変更する予定はありません」と返信がきましてね、もう即座に解約しました。やはりどんなに立派なことを言っていても、情報発信の質や量、中身などにそのファンドや運用会社の姿勢が出ますよね。

 あとはポートフォリオの推移を見れば大体そのファンドの姿勢がわかります。1年経ったら組入銘柄全部入れ替わっているなんてファンド、世の中にいっぱいありますからね。

 仮にそれでいい成績が出てもファンドマネージャーが銘柄をとっかえひっかえして、たまたまうまくいっただけかもしれません。企業の価値を見極めて投資しているとは思えないし、そういうファンドには全然興味が持てません。トレーディングをやってもらうためにお金を託しているわけではありませんから。

つみたてNISAのファンド選びは間違い

rennyさんインタビュー自分たちの想いや行動を投資家に伝えようとしないファンドには興味ない

 ──では、rennyさんがこれからのアクティブファンドに期待することは何ですか。

 rennyさん やっぱり株式投資の本質をちゃんと伝えてほしいですよね。それを実践しているのはごくわずかの運用会社だけです。

 ──独立系で直販をやっている運用会社に限られますか。

 rennyさん 必ずしも直販であることは重要ではないと思います。直販でなくても販売会社と協力し合ってやればできると思うし、一部のネット証券では、そういう啓蒙活動に前向きに取り組んでいるところもあります。

 ──rennyさんが発起人の一人でもあり、もう10年間も継続しているイベント『コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ』も、投資の啓蒙が開催の理由でしょうか。

 rennyさん 株式投資の本質的な意味を理解して、長く継続する投資家を一人でも多く増やすために開催しています。株式投資とは企業の価値にお金を投じることであり、投資のリターンは目先の価格変動から生まれるのではなく、投資先企業が生み出す価値がもたらすものだということを腹の底から理解、納得できていれば、日々の基準価額なんて気にならなくなるし、その結果、長期で継続することにつながります。

 そもそも自分が株式に投資していることを腹の底から理解せずに投資している人が少なくありません。皮肉なことに、つみたてNISAがそういう投資家を増やしていますよね。

 もちろん投資初心者を想定した非課税制度が創設されるのはとてもいいことだと思います。でも、どれだけの人がつみたてNISAを始めたか、という入り口を役所が重視しすぎているため、投資の本質をないがしろにしているような気がしてなりません。

 簡単に始められることは大事ですが、それ以上に投資とは長く継続することが大事です。コストが安いから継続するかというと、それも違いますよね。

 ──そうですね。やっぱり株式投資の必要性や本質をしっかり理解し納得していないと、途中でやめてしまうかもしれません。特に現在のような大きな調整局面を迎えると、「やっぱり投資は怖い」となってやめちゃう人もいるでしょう。

 rennyさん そう。だから僕はつみたてNISAの対象となっているアクティブファンドの選び方に関して、ものすごく頭に来ているんです(笑)。コストの安さが重要な選考基準になっているでしょう。つみたてNISAで投資をスタートした人が長く投資を続けるよう、販売会社にも啓蒙活動を行ってもらうべきなのに、コスト、コストの一辺倒ではやれませんよ。

 つみたてNISAはインデックスファンドのコスト競争を煽っただけで、投資家とファンドとの間の関係強化には何ら進展をもたらしていない、と強く感じます。その一方で、つみたてNISAの埒外で関係強化を目指すアクティブファンドが現れつつあることには大きな期待を持っています。

 ──そうですね。だからこそアクティブファンドにはがんばってもらいたいですよね。

 rennyさん いまみたいな時期に将来を見据えて銘柄選択しているアクティブファンドがどれくらいあるかわかりませんが、ちゃんと仕込めているファンドは回復局面で必ず大きく戻します。何度もいいますが、こういうときこそ投資先を選ぶことの意味が問われますし、アクティブファンドが真価を発揮するときだと思います。

(注)インタビュー内容は、rennyさんの取材日時点(2020年3月26日)の投資判断および見解であり、現在の投資判断・見解とは異なる場合があります。