アクセンチュアとQlik Technologies Incは2020年2月、「データリテラシーによる人への影響」の調査結果を発表した。調査期間は2019年9月。イギリスやドイツ、フランス、アメリカ、日本など全9ヵ国の従業員数50名以上の企業に務める正社員を対象としたもので、日本人1,000人を含む、計9,000人から回答が得られた。これにより、企業と従業員のデータリテラシーに対するギャップが明確となった。

データ活用のストレスが起因して起こり得る企業の損失が明らかに

 データ活用は、企業の成長やイノベーションの創出において必要不可欠となる。しかし、従業員のデータに対する理解が不十分だと、生産性およびビジネス価値の損失につながってしまう。総合コンサルティング大手のアクセンチュアと独自のデータ管理や分析プラットフォームを提供するQlik Technologies Incが実施した最新調査によると、情報やデータ、技術的な問題によるストレスを要因とする企業の時間的損失は、1年で従業員一人あたり5日以上あることが明らかになった。日本だけで見ると4日以上の時間的損失が発生するという。また、生産性の損失を1米ドル=108.66円で算出した場合、アメリカでは11.9兆円、ドイツで2.6兆円、日本で1.6兆円、イギリスで1.4兆円にのぼることが判明している。

ビジネスでデータを効果的に活用する上での現状の課題とは

 今回の調査では、従業員のデータリテラシーレベルが「企業が求める値」に達しておらず、ビジネスで効果的にデータを活用する上での2つの課題があると明らかになった。

・課題1 ほとんどの従業員がデータの価値を認識している一方で、データ活用を通じた意思決定がされていない

 調査結果によると、日本人回答者1,000人中、「データ活用にあたり十分な準備ができている」と回答したのは15%(グローバルでは25%)、「データリテラシースキルに対する自信がある」は、わずか9%(グローバルでは21%)にとどまった。世界の結果と比較しても、日本における従業員のデータ活用は遅れを取っているといえる。また、32%が「データ活用が信頼性の高い意思決定に繋がる」と回答しているものの、38%の日本人が意思決定時には直感に頼っていることもわかった。

・課題2 データスキル不足がもたらす生産性の低下

 調査によると、日本人回答者の70%が「データ利用に戸惑い、作業効率が落ちる」と回答。また、「データ活用を避け、別の方法で業務を実施する」との回答が43%に上った。加えて、職場でのストレスの一つとして「データが多すぎる」との回答も58%あった。このうち、16%が「データおよび技術面でのストレスによる病気休暇を1年で1日以上取得する」と回答した。データを扱うことに対する抵抗感のある従業員一定数存在していることが見えてくる。

 従業員のデータスキルが向上することで、企業の生産性や競争力の向上も期待できる。現状の意思決定の方法を見直しながら、従業員が自信を持ってデータ活用ができるよう、研修の実施やツールの導入を検討することは、企業にとっても急務といえそうだ。

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HRプロ編集部

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