ちなみに、ここでウイルスの拡散を阻止しようとする伝染病学者を演じているのが『タイタニック』のケイト・ウィンスレットである。彼女のほか、マット・デイモンら、この映画に出演者たちはこの度、コロンビア大学の依頼で新型コロナウイルスに関する解説動画に出演。手洗いやソーシャル・ディスタンス(社会的距離)確保の大切さを訴えている。今回の騒ぎで、この映画を観る人が急増、リアルな展開が再評価されている。専門家も太鼓判を押す、いまの私たちに最も必要な作品である。
(参考)コロンビア大学公衆衛生大学院 CONTROL THE CONTAGION サイト:https://www.mailman.columbia.edu/control-contagion
医療崩壊するか、しないか
新型ウイルスの感染が拡大する日本で、闘い続ける医療従事者たちの姿を追う『感染列島』(2008)。ここで目を見張るのは、緊急で運び込まれた病人によって、たちどころに広がる院内感染の恐ろしさ。あれよあれよといううちにベッドは埋まり、重病の患者を優先したいという病院側の説明も空しく、押し掛けた軽症の人々が「入院させろ」と訴える騒ぎとなる。日に日に疲弊する医療スタッフと爆発的に増える患者数。医療崩壊が起きるなか、緊急救命医役の妻夫木聡による「たとえ明日、地球が滅びるとも、今日君は林檎の木を植える」という台詞が印象的。「とりあえず病院」と駆けこむのは間違いと多くの人が知っていれば、こんな惨事にはならなかったはずだ。
猛威を振るう変種ウイルスの拡散を防ぐために完全封鎖された街でのパニックの様子が映し出されるのが『FLU 運命の36時間』(2013)。コンテナに入れられた密入国者たちが韓国の盆唐に運ばれてくる。ところが病気にかかっていた一人が原因で、中にいた全員が感染。唯一、生き残った者が街に飛び出し、感染源となって人々の生命が脅かされる。映画の序盤から、1.密閉空間、2.密集場所、3.密接場面の3密に閉じ込められた人々の惨状に目をそむけたくなる。ちゃんとしないとマスクも意味がないこと。スマホでも感染すること。そして、何もせず、咳をすると、無防備な人々にどれだけ飛沫が浴びせられるかが、映像で実にわかりやすく伝わってきて、おぞましい。