新型コロナウイルスの感染拡大によって、一部の企業で4月入社予定者の「内定取消」が行われている。一方で、内定を取り消された新卒者を救うべく、「救済採用」に乗り出す企業も続々と登場。コロナ禍に新卒者が翻弄される姿が日に日に浮き彫りになってきた。

3月31日現在、58人の学生が内定取り消しに

 3月31日、厚生労働省が発表した内定取り消し件数について、新聞やテレビなどが大々的に報道した。これによると、新型コロナウイルスの影響で、この春に高校や大学などを卒業する学生の内定取り消し数は、31日現在で23社、58人にのぼるという。業種別に見ると、卸売り・小売りが27人で最も多く、次いで宿泊・飲食の13人となった (学校の内訳は高校16人、大学等が42人)。当該データに含まれないケースもあると見られ、内定取り消し数は今後さらに増えていきそうだ。

 一方で、内定を取り消された新卒者を救済する動きも出てきた。株式会社松屋フーズでは、新型コロナウイルスの影響により、内定取り消し等を受けた2020年3月卒業見込みの学生(大学・短大・専門・高校)を対象に追加採用選考を実施している。募集職種は営業総合職で、入社時期は4月から5月を予定。選考は、通常のフローと内容が異なり、Web会社説明会、Web適性試験を経て、最終面接を実施するという。

 同じく飲食では、カレーチェーンなどを手掛けるゴーゴーカレーグループが内定を取り消された2020年3月卒業の新卒者を大募集。募集職種は総合職で、ストアマネジメント、商品本部・MD部、FC事業部・海外事業部、管理本部など多岐にわたる。まずは採用担当者に電話をして、書類を提出すると面接が受けられ、1回の面談で即日合否を判定する。

 カラオケ、レストラン、ブライダル、ホテル事業などを展開する株式会社ニュートンと、グループ会社の株式会社サンザでは、すでに73名の新卒入社が決まっていたが、急遽追加枠(最大20名)を用意した。今回の追加募集では、Web会社説明会を実施し、遠方からの参加も可能。またすでに2020年4月に予定していた入社式や新入社員研修は6月に延期を決定しており、今回の追加採用決定者に関しても6月に合わせて参加が可能だという。

 携帯販売大手のコネクシオ株式会社では、2020年4月に約240名の入社が決定しているが、内定取り消しとなった学生を対象に「100名規模の追加採用」を実施する。募集職種は販売職、営業職、専門職。受付期間および選考日程は、2020年3月~4月で、入社時期は4月~5月を予定。また本採用は、会社説明会に参加してもらったうえで、簡易なプロセスでの選考を予定しているという。

 東京都を拠点にタクシー、ハイヤー、バスなどの運営を行う国際自動車株式会社でも、2020年新卒の追加採用を実施中だ。追加募集で採用する職種はタクシードライバー。選考は会社説明会(日時応相談)、複数回の選考を経て、最終選考を行なう。勤務地は東京で、入社時期は状況に応じて柔軟に対応するという。

 家電量販店を運営する株式会社ノジマでも、4月入社の特別採用枠を設け、採用サイトで希望者の受付を行った。同社は4月入社で約300人を迎えるが、特別枠の採用人数に上限は設けていない。3月31日までを受付期間とし、3月20、22日には横浜本社にて緊急説明会も開催した。入社時期は状況により柔軟な対応を検討するという。

 内定取り消しの防止策としては、企業が従業員を解雇せず、休業手当を払って休ませた場合に支給される、雇用調整助成金がある。4月からその補助率は、最大で中小企業は10分の9、大企業は4分の3に拡充される。新型コロナウイルスによる経営不安が広がる中、企業にはぜひ雇用調整助成金(※)を積極的に活用し、雇用の維持に努めていただきたい。

【参考リンク】
※:新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置について(厚生労働省)

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HRプロ編集部

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