外出自粛要請を受けて人通りが減った東京・歌舞伎町(2020年3月31日、写真:長田洋平/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

まさかこんな経験をすることになるとは

 人間は命を守るために多くの課題と向き合ってきた。戦争、自然災害、飢餓、感染症などである。私は終戦の3年後の1948年に生まれ、以後72年間生きてきた。従って我が国の戦争は体験していない。世界には飢えに苦しむ人びとが8億人以上いると言われている。だが日本に生まれた私は、子供の頃は貧しい食生活ではあったが、飢えということはなかった。

 1995年1月、私の故郷である兵庫県を襲った阪神・淡路大震災時、私は東京に住んでいたが信じられないテレビの映像を見て呆然とした。兵庫県でこのような大地震が発生するなどまったく想定していなかった。2011年3月には、東日本大震災が発生した。あの大津波も想像を絶するものであった。これらの震災によって多くの人びとの命が奪われ、財産が奪われた。東京電力福島第一原発のメルトダウン(炉心溶融)によって、大量の放射性物質が漏れ出し、いまだに故郷に戻れない人々も数多い。

 どちらも二度と経験したくない大震災であった。ただ日本は自然災害の多い国だから、またあるかもしれない。どうかもうありませんようにと祈る気持ちであった。だが、とんでもない災厄がまたもや日本を、人類を襲ってきた。それが新型コロナウイルスである。まさか生きているうちに、こんな災厄に見舞われるとは想像もしなかった。

 世界の感染者数は120万人を超えた。さらに増え続けることは確実だ。国連のグテーレス事務総長は、3月31日、新型コロナウイルスの感染拡大について、「第2次世界大戦以降で最も困難な危機だ」と語ったがその通りである。

 世界でも、日本でも感染の拡大は間違いなくさらに進むだろう。国民にマスク2枚ぐらい送って済む話ではないのだ。