新型コロナウイルスと資産運用

 新型コロナウイルスの感染拡大で動揺する市場環境の中、個人投資家の資産運用はどうあるべきなのでしょうか。MonJaでは、著名なエコノミストやファイナンシャルプランナー、当サイトの執筆者などを対象にアンケートを実施し、協力していただいた11人の方の回答を紹介しました。資産運用のプロが語る新型肺炎との向き合い方について、あらためて振り返ります。

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 新型コロナウイルスの感染が拡大した影響で、世界の株価が下がり始めたのは2月下旬のことでした。2月の中頃までは、アメリカでは連日のように株価指数が史上最高値を更新したという景気のいいニュースに沸いていましたが、そんな活況も、新型コロナウイルスの猛威ですっかり消し飛んでしまいました。「コロナショック」という言葉も定着しつつあります。

 そんな世界経済の急変を受けて、MonJaでは「新型コロナウイルスと資産運用」と題した緊急企画を実施しました。資産運用のプロの方々に、新型肺炎の拡大で動揺する市場環境の中で、個人投資家の資産運用はどうあるべきかを尋ねました。

ナンピン買いとパニック売りは控える

 「調整局面(株価が大きく下がる局面)でやってはいけない行動」に関して、みなさんが口をそろえて言っていたのは「マーケットの急落を見て、恐怖心にかられて株式などの売買をしてしまう」ことでした。

 株価が下がったときにありがちな投資家の行動は、大きく2つに分かれます。
 ひとつは、値下がりをチャンスととらえて、下がったときに一括投資すること。これを株式投資の用語では「難平(ナンピン)買い」と呼びます。
ナンピン買いを行えば、確かに買った株式や投資信託などの平均単価は下がります。ところが、そこからさらに株価などが値下がりして、下がった価格がなかなか戻らないということが往々にして起こります。株式の個別銘柄では、最悪の場合は企業が倒産してしまうこともありえます。

 投資の格言に「落ちてくるナイフをつかむな」というものがあります。3月初旬の株式市場は、今から振り返るとまさに「落ちてくるナイフ」でした。投資信託であれば、5年以上持ち続ければ価格が戻るかもしれませんが、逆に言えば5年間は塩漬けにする覚悟が必要になります。いつ価格が戻るかわからない投資信託を持ち続けるのは、簡単ではないかもしれません。

 もうひとつの行動が「パニック売り」です。急な値下がりに耐えられず、持っている株式や投資信託などをあわてて現金化してしまう方は少なくありません。せっかく続けてきた積立投資をやめてしまう方もいます。
理論上は、株価が安くなったところで売っても、さらに安くなったところで買い直せば、株価が戻ったときに利益を上げることができます。ところが、パニックに陥っているとそうした冷静な判断はできないものです。もう下がらないだろうと思って買い、思惑が外れてさらに下がったら怖くなってまた売ってしまう、その繰り返しで傷口を広げてしまいがちです(筆者も過去に、原油や銀の先物相場でとてつもなく痛い目にあいました)。

 独立系ファイナンシャルアドバイザーの福田猛さんは、「NYダウが『コロナ拡大』のニュースに反応して1,000ドル下げたかと思うと、次の日は『世界的な金融緩和』のニュースが出て1,000ドル上昇といったことが起こります」と書いていました。まさにそのとおりのことが起きています(下図参照)。
 このような状況で冷静になるのは難しいのですが、厳しい現実と向き合ったうえで、それでも積立投資を続ける、それでもこの会社の株を持ち続けるという覚悟を決めることも必要なのかもしれません。

 株式アナリストの鈴木一之さん「投資した株式と真摯に向き合って、まず現実を受け入れて、その上でどの銘柄を保有し続けるべきか、反対に、損失を覚悟してロスカット、売却すべきかを吟味すべきです。そのような苦労の先に株式投資の果実が待っています」と述べています。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さん「業績等が厳しそうな銘柄は損切りも必要です」と答えました。
 株式投資では、それぞれの企業がコロナショックに耐えられるかどうかをシビアに見極める目も求められそうです。

【図表】NYダウの推移
NYダウの推移1
NYダウの推移2