1999年の「男女共同参画社会基本法」の施行前後から始まった多様性のある社会の推進は、2015年の女性活躍推進法の施行や障害者雇用促進法の改正により、ダイバーシティの推進へと発展してきました。以前はダイバーシティという言葉さえ聞き覚えがなかったはずが、いまではすっかり市民権を得たように思います。あれだけ騒がれていたダイバーシティ「ブーム」は、もう終わってしまったのでしょうか。今回は人事の現場から、ダイバーシティの「今」に迫ります。

ダイバーシティは今どうなっているのか?

 2010年代に始まった女性活躍推進や障害者雇用などのダイバーシティの取り組みは、その後、LGBTや外国人活用にまで広がりを見せました。開始からもうすぐ10年。日本のダイバーシティはいま、どうなっているのでしょうか。私の肌感として、最近は「3極化」が進んでいると感じます。

 1つ目は、女性活躍推進や障害者雇用などの法的なダイバーシティに率先して取り組み、すでに一巡した企業。「新・ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれ、障害者雇用では特例子会社の設立も行い、LGBTの取り組みも積極的に行ってきたようなところです。

 こうした「目に見える」ダイバーシティ化に積極的に取り組んできたのは、大手上場企業に多い傾向です。こうした先進企業の人事部の方とお話しすると、「ダイバーシティに関してはほとんどやりつくした」という感じを受けます。最近ではLGBTの取り組みもひと段落し、ダイバーシティから働き方改革へとシフトしている企業が多いように感じます。

 2つ目は、ダイバーシティの取り組みをあえてせずとも、もともと当たり前になっている企業。外資系企業やベンチャー企業、中小企業に多いと感じます。比較的コンパクトな組織をもつ企業では、女性も男性も年齢も関係なく、すべての社員が活躍しています。

 最近お会いした方が働くある教育系企業では、以前から主婦や60代以上のシニアを積極的に採用しているそうです。そのため、あえてダイバーシティを推進しなくても、誰でも活躍できるのが当たり前という感覚が定着しています。

 また外資系企業では、日本での取り組み推進以前からダイバーシティが当たり前だった企業もあります。特に北欧系の企業では、日本で女性活躍推進が始まる前から、女性やLGBTの方が会社を支えてきました。また、ヨーロッパ系の企業では、最近はこうした“見た目上”のダイバーシティがひと段落し、次は学歴フリーの取り組みを始めているとのことです。例えば、ある北欧系家具メーカーでは優秀であれば中卒でも採用するそうです。

 3つ目は、やっとこれから女性活躍や障害者雇用に取り組み始める企業です。これは、もともと男性技術者が会社を支えてきたBtoBメーカーに多い傾向だと感じます。BtoB企業は、BtoC企業と比べるとダイバーシティの取り組みが遅れがちです。

 例えばBtoC企業が女性をターゲットにした商品を販売する場合、社内でも女性が活躍していなければならないというロジックが成り立ちます。しかし、BtoB企業では売上や企業価値向上にダイバーシティが直結しづらく、推進に納得感を持たせるまで時間がかかります。しかも、もともと女性が少ない企業も多いため女性活躍の取り組みが遅れがちです。