(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
東日本大震災から9年の歳月が経過しました。
しかし、今も多くの方の行方がわからないままです。
『不明なお2529人 東日本大震災、死者は1万5899人―警察庁』(時事通信・2020.3.6)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020030601014&g=soc
上記記事によれば、この1年間で新たに見つかったのは2遺体。
警察庁が3月1日に発表した被害状況によると、死者は1万5899人、行方不明者は2529人とのことです。
あの日以来、家族の安否もわからないまま、ずっとその行方を捜し続けている人がどれほどいらっしゃることでしょう。
たとえ見つかったとしても、時間が経過した遺体の場合、「その人が誰なのか」ということは、すぐにはわかりません。そこから始まる身元確認作業には、大変な労力と時間が必要なのです。
歯科所見による身元確認で、犠牲者を家族のもとへ・・・
私は、東日本大震災の発生直後から、遺体の身元確認作業にあたる歯科医の方々への取材を続けてきました。
実は、1万5899人という膨大な数の遺体が自身の名前を取り戻し、家族のもとへ帰った背景には、全国各地から駆けつけた大勢の歯科医師たちによる献身的な身元確認作業がありました。
彼らは、発災直後から被災地に駆け付け、死後硬直によって固く閉じた遺体の口を寒さにかじかむ手で開きながら、一体一体丁寧に調べ、治療痕や入れ歯の状況を「デンタルチャート」という用紙に記録し続けたのです。