現金のリスク

 「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、株式だけでなく債券などにも投資する投資信託「バランスファンド」の効果について考えてみたいと思います。

投資では「相性の合わない」のがベストな組み合わせ?

 人間関係や夫婦の関係は、「相性」がとても大切だと思います。
やはり、「相性の合う」方とお付き合いする方が、人間関係はとてもスムーズになりますよね。

 ところで、人間関係とは異なり、投資の世界では「相性が合わない」どころか、「性格が真逆」な方が、ベストな組み合わせといえそうです。

あらためて、債券と株式の違いとは?
  株式 債券
目的 外部からの資金調達 外部からの資金調達
満期 ない ある
満期時には額面で返す約束
貸借対照表では 自己資本
(返済不要)
他人資本
(返済必要)
インカムゲイン
(保有中の利益)
配当金
(業績に基づき配当する)
利息
(発行時に約束されている)
キャピタルゲイン
(売買益)
損益のどちらもあり得る 損益のどちらもあり得る
価格が動く理由 その会社の業績や噂、
金利・社会・世界情勢などに
左右される
主に金利に左右される
景気に対して 株価は先んじて動く傾向 債券価格は景気とは逆に動く傾向
インフレに対して 強い 弱い
最悪のケース ゼロ ゼロ
万が一の時は他人資本の債券から優先して弁済される
株式は自己資本なので弁済は、まず見込めない
発行者 企業 政府、地方自治体、企業など

※お断り
マイナス金利の影響もあり、実際の債券の動向は本稿とは異なることがあります。
また、本稿における「債券」とは利付債を意味し、劣後債や仕組債などは含まれていません。

 上の表は、拙稿の第4回の表にアレンジを加えて(パワーアップして)、再び載せたものです。

 表の「貸借対照表では」という行をご覧いただくと、株式は自己資本なので、(株式を発行して資金調達をした企業は)返済が不要です。それに対し、債券は他人資本ですから、資金を出してくれた人、つまり債券を買ってくれた人に返済の義務が生じます。
 という具合に、株式と債券って、その目的は同じ「資金調達」でも、性格(?)が真逆なのが分かりますよね。

 ほかにも、「満期」という行や、「インカムゲイン」という行をご覧いただくと、それぞれに「約束」という文字が含まれています。しかし、株式には「約束」の文字が含まれていません。
 こういった点でも、株式と債券は、その性格が真逆、つまり「相性が合わない」者同士と言えると思うのですが、いかがでしょうか?

 さらに、表の「景気に対して」という行をご覧いただくと、株価と債券価格の、それぞれの動きは逆の傾向にあり、インフレに対してもお互い背中合わせのような性格なのです。

ご飯とみそ汁考えてみれば、ごはんとみそ汁も「個体と液体」「炭水化物(米)とたんぱく質(大豆)」ですから性格は真逆ですが、確かにベストな組み合わせです

株式がアクセルなら、債券はブレーキ?

 拙稿第5回でも申し上げている通り、(株式に比べれば)債券は値動きが安定しているが、(株式に比べれば)債券には成長が見込まれません。なので、やはり資産の成長には株式への投資が欠かせません。
 とはいっても、長期では成長が期待できる株式も、短いスパンでは株価は上下に変動します。(特に「預金が絶対!」という方は)株価が下落し、元本割れを起こすのは絶対に嫌ですよね。

 では、「株式と併せて、債券にも投資をする」というのはいかがでしょうか?

 先述の通り、株式と債券は真逆の性格です。
 株式への投資が、資産を成長させる「アクセル」だとするのなら、債券への投資は「ブレーキ」の役割を担っているといえるのではないでしょうか?

 自動車はアクセルだけでは危険です。ブレーキの働きがあってこそ、目的の場所へ安全に移動できます。
 これを投資に当てはめてみると、株式だけでなく債券にも投資したら、

 「価格が変動(価値が上がったり下がったり)するリスクを抑えられる」

 と考えることができそうですよね。