みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長(写真:ロイター/アフロ)

『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史――史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』(日経コンピュータ著、日経BP)という書籍が注目を集めている。1999年に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行が経営統合を発表して以降、2回起こった大規模システムダウンと、その後のシステム刷新プロジェクトが完了するまでの経緯を描いたものだ。

「みずほ銀行システム統合、無事完了しても残る不安」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59411)では、2度のシステムダウンの内容と原因、そしてシステム刷新プロジェクトを、この書籍(以下『苦闘の19年史』と略)に基づいて紹介した。

 ただ、その記事の最後に書いたように、「システム統合が完了したが、今後どうなるのか、これで安心してはいけないのではないか」という記述が『苦闘の19年史』には足りないように思える。著者の一人であり、この19年間、みずほ銀行の情報システムを取材し続けてきた、IT誌「日経コンピュータ」の大和田尚孝編集長にインタビューを行い、その疑問点に答えてもらった。

昭和時代の負の資産から決別できた

――2019年に刷新が完了した、みずほ銀行の新しい勘定系システムMINORIをどう評価していますか。

大和田尚孝氏(以下、敬称略) ともかく完成したわけですから、上から目線な言い方になってしまいますが「合格」と言えるでしょう。

 それまで中身がよくわからずブラックボックスになっていたプログラムが残っていて、それがトラブルを起こした大きな要因でした。そういうのが残っていればまた同じことが起きるはずです。昭和の時代に作った負の資産と決別できたことは大きく評価できると思います。

――ただ、現時点で見るとシステムの内容は“最先端”とは言えないものではないでしょうか。

大和田 2012年から本格的に作り始めたので7年という期間が経っています。なのでシステムのアーキテクチャは7年前のものなのです。当時としてはある程度最先端な概念や技術を採用したのでしょうが、7年経った今ではクラウド、AI、ブロックチェーンなどが注目されるようになっています。

「そんなに長い期間をかけて巨大な一つのシステムを作るのはどうなのか」という意見もあるようですが、確かにそういう面もあるとは思います。これからは「巨大なシステムが一つ存在する」という形態がだんだんなくなっていくでしょう。勘定系システムでも預金とか融資ととか新商品とか、機能別のサブシステムに分かれる時代になるはずです。