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 AIと半導体の両方を武器に快進撃を続けるエヌビディアには、半導体を設計する「ファブレス」とは異なるもう一つの顔がある。つまり、AI開発に関するハード、ソフト、サービスを一貫して提供する「AIプラットフォーマー」としての顔だ。前編に続き、2024年9月に著書『エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界』(PHP研究所)を出版した国際技術ジャーナリストの津田建二氏に、エヌビディアのAIプラットフォーマーとしての強みや、同社が次に狙う新市場について聞いた。(後編/全2回)

エヌビディアが「AIプラットフォーマー」を自称する理由

──前編では、エヌビディアが急成長を遂げた要因、日本の半導体産業が学ぶべき同社の経営術について聞きました。著書『エヌビディア 半導体の覇者が作り出す2040年の世界』では、創設者兼CEOのジェンスン・フアン氏が同社を「AIプラットフォーマー」と定義しているとのことですが、具体的にはどのような事業形態なのでしょうか。

津田建二氏(以下敬称略) エヌビディアではハード、ソフト、サービスの全てが揃ったソリューションを用意しています。AIをつくるための基本技術を持っているという意味で、自社を「AIプラットフォーマー」と定義しています。

「AIを使って何かを実現したい」という顧客に対し、半導体チップだけを提供しても、顧客は何をすれば良いのか分かりません。そこで、AI活用に最適な半導体であるGPUと、それを動かすためのソフトウエア「CUDA(クーダ)」を提供することで、多くの顧客にとって欠かせない存在となっているのです。

──例えば、自動車メーカーがAIを活用した自動運転を考える時に、エヌビディアのプラットフォームが候補に挙がる、ということでしょうか。

津田 そうですね。各社が公言しているわけではありませんが、現時点でエヌビディアのプラットフォームを使っているメーカーは非常に多いと思います。

 エヌビディアが優れているのは、チップの使い方からAIを動かすためのソフトウエア開発環境まで、基本となるプラットフォームをトータルソリューションとしてそろえている点です。

 米インテルや米AMDといった半導体メーカーもエヌビディアと同じくAIと半導体の両輪を持っていますが、ハードだけでなくソフトウエア、そしてソフトウエア開発環境まで提供しているのがエヌビディアの特徴であり、強みなのです。