「自動車の祖国」を象徴するGMの栄枯盛衰

【図表2】2010年と2000年のNYダウ構成銘柄

2010年 2000年
3M(※1) ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング
アメリカン・エキスプレス アメリカン・エキスプレス
AT&T(※2) SBCコミュニケーションズ
ボーイング ボーイング
キャタピラー キャタピラー
シェブロン ハネウェル
シスコシステムズ ゼネラルモーターズ
コカ・コーラ コカ・コーラ
デュポン デュポン
エクソンモービル エクソン
バンク・オブ・アメリカ フィリップモリス
ザ・ホーム・デポ ザ・ホーム・デポ
インテル インテル
IBM IBM
ジョンソン・エンド・ジョンソン ジョンソン・エンド・ジョンソン
JPモルガン・チェース J.P.モルガン&カンパニー
マクドナルド マクドナルド
メルク・アンド・カンパニー メルク・アンド・カンパニー
マイクロソフト マイクロソフト
アルコア アルコア
ファイザー イーストマン・コダック
プロクター・アンド・ギャンブル プロクター・アンド・ギャンブル
トラベラーズ(※3) シティグループ
クラフトフーズ・グループ インターナショナル・ペーパー
ユナイテッド・テクノロジーズ ユナイテッド・テクノロジーズ
ベライゾン・コミュニケーションズ AT&T(※4)
ヒューレット・パッカード ヒューレット・パッカード
ゼネラル・エレクトリック ゼネラル・エレクトリック
ウォルマート ウォルマート
ウォルト・ディズニー・カンパニー ウォルト・ディズニー・カンパニー

太字は入れ替わった銘柄。
※1 ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリングは3Mに改称
※2 現AT&Tは旧SBCコミュニケーションズが改称した会社(下記参照)
※3 シティグループはトラベラーズと合併
※4 旧AT&&TはSBCコミュニケーションズと合併(下記参照)

 2000年から2010年の10年間で入れ替わったのは6社(合併などに伴う社名変更分を除く)。中でもインパクトが大きかったのは、2009年にゼネラル・モーターズ(GM)がNYダウから除外されたことでしょう。

 白熱電球を発明したのも、電話を発明したのも、自動車を発明したのも、飛行機を発明したのも、みんなアメリカでした。自動車の祖国であるアメリカを代表する自動車メーカーのGMが経営破たんと国有化を経てNYダウを外され、ネットワーク機器を扱うシスコシステムズが採用されたことは、アメリカの産業構造の変化を象徴しているようにも見えます。

 電話を発明したグラハム・ベルが立ち上げた会社を前身とする通信会社のAT&Tは、2005年にSBCコミュニケーションズに吸収されました。もともとSBCコミュニケーションズはAT&Tから分社した企業であり、子が親を吸収した形です。SBCコミュニケーションズはAT&Tの名跡を継ぎ、NYダウの銘柄に残ったものの、2015年にはアップルに取って代わられました。

歴史ある企業がNYダウから去った90年代

【図表3】2000年と1990年のNYダウ構成銘柄

2000年 1990年
ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング
アメリカン・エキスプレス アメリカン・エキスプレス
SBCコミュニケーションズ シェブロン
ボーイング ボーイング
キャタピラー ナビスター・インターナショナル
ハネウェル(※1) アライドシグナル
ゼネラルモーターズ ゼネラルモーターズ
コカ・コーラ コカ・コーラ
デュポン デュポン
エクソン エクソン
フィリップモリス フィリップモリス
ザ・ホーム・デポ シアーズ・ローバック
インテル グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー
IBM IBM
ジョンソン・エンド・ジョンソン ベスレヘム・スチール
J.P.モルガン&カンパニー アメリカン・キャン
マクドナルド マクドナルド
メルク・アンド・カンパニー メルク・アンド・カンパニー
マイクロソフト ユニオンカーバイド
アルコア(※2) アルミナム・カンパニー・オブ・アメリカ
イーストマン・コダック イーストマン・コダック
プロクター・アンド・ギャンブル プロクター・アンド・ギャンブル
シティグループ ウェスティングハウス・エレクトリック
インターナショナル・ペーパー インターナショナル・ペーパー
ユナイテッド・テクノロジーズ ユナイテッド・テクノロジーズ
AT&T(※3) アメリカン・テレフォン・アンド・テレグラフ
ヒューレット・パッカード テキサコ
ゼネラル・エレクトリック ゼネラル・エレクトリック
ウォルマート F.W.ウールワース
ウォルト・ディズニー・カンパニー USX

太字は入れ替わった銘柄。赤字は1928年時点での採用銘柄。
※1 ハネウェルはアライドシグナルと合併
※2 アルミナム・カンパニー・オブ・アメリカはアルコアに改称
※3 アメリカン・テレフォン・アンド・テレグラフはAT&Tに改称

 1990年から2000年の10年間では、11社が入れ替わりました。
 この間、NYダウの銘柄が30社になった1928年以来採用され続けてきた企業11社のうち、7社がNYダウから去ることとなりました。
 その内訳を見ると、F.W.ウールワース社を除く5社が鉄鋼業や電機メーカー、石油企業といった重工業でした。これらがインテルやマイクロソフト、ウォルト・ディズニーと入れ替わったのが1990年代。日本などに押されていたアメリカ経済が、強さを取り戻していく時期でもありました。

 1928年時点の構成銘柄のうち、この時期にNYダウから外されたアメリカン・キャンも、もともとはその名のとおり製缶業を営んでいました。その後も製造業を幅広く手がけていたのですが、1980年代には製造業から撤退し、金融サービス業に業態を転換させました。
 現在NYダウに採用されている、米国最大級の保険会社であるトラベラーズのルーツのひとつがこのアメリカン・キャンです。