航空機に衝突するまでの航跡
イラクとイランは、陸続きで接している。日本と北朝鮮のように、海を境に遠く離れてはいない。
そのことから、捜索用の防空レーダーを高い山に設置していれば、遠くの航空機やミサイルを発見し、監視することができる。
米国は、レーダーをイラクやイランの周辺国に配置、あるいは、弾道ミサイル探知のために電子戦機を飛行させて、そのレーダーでイラン国内のミサイル発射の動きを監視していた。
軍事衝突が予想されるときに、監視の目を出しておくことは、当然のことである。
イランの弾道ミサイルを監視していた時に、偶然、地対空ミサイルがウクライナ機に衝突する様子がレーダーの監視画面(写真参照)に現れて、その事実が判明したのだろう。
地対空ミサイルシステム用レーダーの監視画面
ギャラリーページへ
電波情報の解明で分かる
ミサイル発射部隊
軍事衝突が予想されるほどの軍事的緊張がある中で、米国の電波情報収集機関、つまり米国の国家安全保障局(NSA)は、電波(情報をやり取りする通信情報とレーダー波などの電子情報)傍受する派遣部隊をイラク国内やイランの周辺国に配備して、イラン軍の電波情報を収集していたものと推測される。
ミサイルによる航空機撃墜の決定的証拠は、イラン防空部隊と上級司令部との会話などのやり取りを含んだ通信状況を傍受したことと、その記録だろう。
イランの地対空ミサイルと一体になって動く防空レーダーが作動状態にあれば、捜索用レーダー波と追随用レーダー波などの電子情報を放射する。
米国は、これらの電子情報とロックオンや発射を示す電子情報を入手し、発射されたミサイルの種類を特定する。
米軍は、公開された映像、通信情報、そして電子情報を、時間経過に沿って総合的に照合した。
そして、何時何分に、イラン軍のどの司令部が射撃指示を出し、どのミサイル部隊がミサイルを発射したか、また、その後の民間機を撃墜したことが判明してからの司令部内の状況が分かったのだろう。