イラン・テヘランで営まれたソレイマニ司令官の葬儀に集まった人たち(2020年1月6日、写真:UPI/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 イランの軍隊はイスラム共和国軍とイスラム革命防衛隊から構成されている。よりイランの統治体制を防衛するという色彩の強いイスラム革命防衛隊に属し、諜報活動や特殊作戦を担当しているのが「コッズ軍」である。

 そしてコッズ軍の指導者として長年にわたりアメリカ側に対する様々な作戦の指揮を執ってきたことからイランでは英雄中の英雄であり、アメリカ軍にとっては最大の障害の人物だったのがガセム・ソレイマニ司令官だ。

 そのソレイマニ司令官が、1月3日、イラクのバクダッド国際空港に到着し迎えのイラク民兵組織指導者たちと車列を組んで空港を出発するや否や、上空に接近してきたアメリカ空軍無人攻撃機MQ-9リーパー(空軍とCIAとの共同作戦と言われている)の爆撃によって殺害された。

ソレイマニ司令官を攻撃した米空軍MQ-9リーパー無人攻撃機

「これまで多数のアメリカや同盟国の人々を殺害してきたイラク軍指導者に対する報復攻撃」(トランプ大統領)はこうして成功した。

ソレイマニ殺害に向けられる軍事的疑義

 ソレイマニ司令官殺害作戦はトランプ大統領のゴーサインによって実施されたため、作戦そのものに対する疑問の声は、軍側からは公には上がってはいない。トランプ政権高官からは、第2次世界大戦中に山本五十六海軍大将を殺害した事例を引き合いに出して、作戦の意義を強調するコメントまで飛び出しているほどだ。