2月3日、政府は今国会提出の産業活力再生特別措置法(産業再生法)改正案を閣議決定した。成立すれば、日本政策投資銀行が一般企業に出資する際、一部に政府保証を付与できる。来年3月末までの時限措置であり、経済産業省が支援先の選定基準を急いでいる。政投銀と商工中金が実施している、「政府保証付き融資」のいわば「出資版」。2009年度予算は出資と融資合わせて最大1.5兆円の補填枠を確保したうえで、5月にも運用が始まる見通しだ。
昨夏、原油価格は一時1バレル=147ドルと史上最高値を付け、米国のサブプライム問題の影響が懸念されつつも、新興国主導で世界経済は成長を持続すると考えられていた。このため、産業再生法の改正案も当初は、中東やロシア、南米といった資源国から資金を集め、日本企業に眠る革新技術を実用化するための「官民出資ファンド」創設などを主目的としていた。
しかし、9月のリーマン・ブラザーズ破綻をきっかけに、地球規模の金融危機が勃発。原油価格が最高値から3分の1の水準まで急落する一方、日本では大企業から中小・零細企業に至るまで資金繰り難に陥った。
省益拡大、「筆頭秘書官」を奪取
こうした中で経産省は、信用保証協会による中堅・中小企業への全額保証付き緊急融資をはじめ、政府系金融機関の大企業海外子会社への融資、貿易保険の拡充による貿易金融の円滑化など、産業資金全般にわたる対策を矢継ぎ早に打ち出した。
財務省が「分身」の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で総額2兆円規模の定額給付金を批判し、麻生内閣と距離を取り続ける姿勢とは対照的だ。
これについて、経産省は「財務省や内閣府が機能していない中、経済・産業の異常事態に対処せざるを得なかっただけ」(幹部)と釈明する。
だが、ちゃっかり省益も拡大。迷走内閣を全力で支える論客として、経産省は昨年末、河村建夫官房長官の秘書官に今井尚哉官房総務課長(1982年入省)を送り込んだ。外務省、財務省、内閣府、警察庁各1人枠への割り込みに成功し、悲願達成の経産省は意気が上がる。