年末になっても下火にならない香港の民主化デモ。香港の行方は中国の行方をも占う。写真は12月25日、警備に当たる武装警官(写真:AP/アフロ)

長期化する米中の構造的対立

既存覇権国と新興挑戦国の対立は不可避

 いまだに米中対立を「貿易戦争」の枠内に閉じ込めた矮小化した議論が見られるが、米中は、すでに構造的・長期的対立に入っている。

 それは、米中の覇権争いや新冷戦と呼ばれている。

 以前、米国をはじめ西側諸国では、中国を巡って、経済が発展すれば自由や民主主義といった西側の価値観に近づいてくるという期待感があった。

 しかし中国は、この10年で経済成長を背景にすっかり大国として振舞うようになり、「世界一流の軍隊」の建設を目標としつつ、東シナ海・南シナ海で見られるように、力による一方的な現状変更を試みるとともに、西側の価値観とは相いれない価値観を世界に広めていると指摘されている。

 中国の台頭は、以前から予想されていたにもかかわらず、自由で開かれた世界の秩序を揺るがす危うい動きとして、国際社会から反発を招くようになっている。

 米国の対中政策は、ドナルド・トランプ大統領のディール重視の手法や刺々しいツイッターでは読み取りにくいが、マイク・ペンス副大統領やマイク・ポンペオ国務長官の講演を通じて公的な基本姿勢が明らかにされている。

 ペンス副大統領は、2018年10月にハドソン研究所で「第2次冷戦」宣言といわれる歴史的演説を行った。

 また、2019年10月のウィルソン・センターでの講演では、過去1年間に中国が見せた不穏な行動を詳細に説明したうえで、「米国は引き続き対中関係の根本的な見直しを追求する」と述べた。

 ポンペオ国務長官は、2019年10月のハドソン研究所主催の夕食会で、中国を支配するエリート層は「闘争と世界支配を目指すマルクス・レーニン主義者の政党」に属していると指摘した。

「彼ら指導者たちの言葉」を聞けば、中国が米国に敵意を抱いていることが分かると述べ、「われわれの2つのシステムの基本的な違いと、こうしたシステムの違いが米国の国家安全保障にもたらす影響を無視することは、もはや現実的ではない」と強調した。

 これらの発言は、驚くべきことではなく、2017年12月に発表された「国家安全保障戦略」(NSS)で明示された米政府の基本姿勢を改めて確認したに過ぎず、その姿勢がより強固になっていることを示唆している。

 このように、米国が中国に対して、断固たる行動を取ろうとしているのは明らかであり、その対立は、構造的であり、そのため、長期化するのは避けられないであろう。