聖火を灯す女性

西側先進国は6カ国のみ

 NHKの大河ドラマ「いだてん」が終わった。

 物語の前半は昔過ぎて関心が持てなかったが、1964年の東京五輪を軸にした物語の後半は「ついこの間」といった身近さで大いに楽しめた。

 特に政治が絡んだボイコット問題が丁寧に描かれ、「昔も今も『五輪=政治』だな」と改めて思い知らされた。

 五輪ボイコット問題を考えるにあたり、多くの人々がまず思い浮かべるのは1980年のモスクワ五輪だろう。

 1979年12月の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻もあり、参加88カ国に対し不参加66カ国というボイコットラッシュの大会となったことは周知の通りだ。

 ではここで質問。いわゆる西側先進国(ここではOECD加盟国と定義する)のうち、モスクワ五輪をボイコットしたのは果たして何カ国だったかご存知だろうか。

 答えはカナダ・西ドイツ(当時)・日本・ノルウェイ・トルコ・米国の6か国。「意外と少ないな」と思われた方が多いのではないだろうか。

 筆者もその一人で、米国の要請のもと西側先進国は一枚岩でモスクワ五輪をボイコットしたと思い込んでいただけに、この数字には驚かされた。

 1980年当時のOECD加盟国は24か国だったので、上記6カ国を除く18か国はすべて出場していたのだ。

 モスクワ五輪を形容する際にしばしば「多くの西側諸国がボイコットした」という枕詞がつくが、上記データに基づけば「いくつかの西側諸国がボイコットした」とすべきであろう。