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 公益財団法人東京しごと財団雇用環境整備課は、東京都と連携し、従業員の介護休業取得を推進する中小企業を対象に、奨励金50万円を支給する「介護休業取得応援事業」を開始した。2019年9月17日より受付を開始しており、事業期間は2019年5月15日~2020年3月31日。これにより、都内の中小企業全体における介護休業取得率を高め、従業員の就業継続を目指すとしている。

 団塊の世代が70歳代に突入することに伴い、高齢者人口は今後も増加傾向が続くと見込まれている。これを背景に、同財団は介護離職ゼロを目的とした新しい事業を開始した。本事業は、従業員に連続31日以上の介護休業を取得させ、復帰後3ヶ月以上継続雇用した企業に対し奨励金を支給するものだ。その他、奨励対象事業の要件として、都内の常時雇用する従業員が300名以下の中小企業及び個人事業主であること、6ヶ月以上継続して雇用保険に加入している労働者が2名以上いること、またテレワーク制度を就業規則に規定していることなどが挙げられている。

 平成29年就業構造基本調査によると、介護のために離職した人は平成28年10月~29年9月の間で9万9000人。平成24年の10万1000人から見ると、その数は横ばいとなっているものの、介護により就業継続を諦める人は未だ多くいると考えられる。また、介護をしている人の有業率を年代別に見ると、企業の即戦力、管理職として活躍しているであろう40~50代で高い値を示している。

 厚生労働省が発表した、2019年8月の東京都有効求人倍率も「2.10」と引き続き高く、41ヶ月連続の2倍台となった。少子高齢化を背景に全国的にも労働需給が逼迫した状態だ。このことから、介護離職者が増加の一途を辿れば、企業においても大きな損失となり、労働力不足をより深刻化させることが推測できるだろう。

 高齢化が進む日本において避けて通れない介護問題。突然始まり長期化する傾向にあることから、介護をしながらでも働ける環境の整備や継続して就業できる働き方を実現することは急務と言える。これまで介護休業を取得する環境整備が進んでいなかった中小企業においても、従業員の介護と仕事の両立を実現するための足がかりとなることを期待したい。

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