(山田 珠世:在上海コラムニスト)
中国の庶民の間で、ここ最近のホットワードと言えば、何と言っても“豚肉”だろう。「金持ちの基準は、豚肉が好きなだけ買えるかどうかだ」といったジョークが出ているほどだ。
中国政府は今年(2019年)9月、計3万トンの備蓄豚肉を市場に放出した。豚肉の需要が急増する同月中旬の中秋節(中秋の名月)、10月1日の国慶節(建国記念日)に向け、市場への豚肉の供給を増やすことが目的だった。豚肉は1万トンずつ3回投入されており、2回目の投入が発表された際には、1日経たないうちに中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」の「人気検索ランキング(熱捜)」のアクセス数が2億を超えたらしい。
中国でなぜ、これほどまで“豚肉”が注目されるのか。
それは豚肉の供給不足に端を発する豚肉価格の高騰がまだまだ止まりそうにないからである。
廃業を余儀なくされた農家や企業も
中国農業農村部によると、昨年(2018年)9月23日時点で1キログラム当たり19.71元(約296円)だった豚肉の出荷価格は、1年後の今年9月8日には34.52元(約518円)となり、上昇率は75%に上った。
中国で豚肉価格が上昇を続けるのは、昨年8月に発生したアフリカ豚コレラのまん延が最大の原因だとされている。中国メディアによると、農業農村部は同8月初旬から2019年8月末までに中国153カ所でアフリカ豚コレラが発生し、119万頭が殺処分されたと発表している。