(後藤 健生:サッカージャーナリスト)
ラグビー・ワールドカップに出場した日本代表は第2戦でアイルランドと戦った。
大会開幕時に世界ランキング1位だった強豪アイルランドとの試合は19対12という接戦で、トライ数ではアイルランドの方が多かったが、内容的には日本の完勝だった。「サッカーと違って番狂わせが起こりにくい」と言われるラグビーだが、日本の勝利はけっして番狂わせではなく、実力での勝利のように見えた。
英国にとって非常にセンシティブなアイルランド問題
さて、そのアイルランドというチーム。すでにご承知の方も多いだろうが、「アイルランド共和国」と「英領北アイルランド」の合同チームである。国旗も緑・白・オレンジの共和国国旗と赤の十字の北アイルランド旗の2本が並んで登場。試合前に歌われるのは国歌ではなく、ラグビーのために作られた「アイルランズ・コール」という歌なのだ。
テレビのコメンテーターなどの中には「政治的に対立するアイルランド共和国と北アイルランドが1つのチームを組むのはノーサイド精神の表れ」などと分かったようなことを言う人もいるが、これはまったくの的外れなコメントだ。
アイルランド問題というのは、日本人が考えるよりずっと根深く、複雑なのだ。
英国のEU(欧州連合)離脱期日まで半月余り。これからさまざまな政治的駆け引きが激化するだろうが、その争点の1つとなっているのがアイルランド国境問題だ。