冴え失いつつあった「感性の経営」
川邊の次に登壇した前澤の話は新社長、澤田の紹介に終始し、その後、マイクを握った澤田は「コンサルタント出身の自分の強みはリアリストであり、ニュートラルで、安定感があること。つまり前澤の真逆です。ゾゾも設立21年目でそろそろ大人にならなければいけないが、つまらない大人になるつもりはありません」と語った。
49歳の澤田は43歳の前澤から引き継いだ重責を果たそうと必死だが、やはり創業者が放つオーラにはかなわない。
その後、3人が一旦、舞台袖に下がり、今度は前澤の独り舞台。
「多くの社員、取引先、株主に応援してもらい、夢のような21年間だった」と振り返り「時代の匂いを感じながらビジネスをする感性型の経営をしてきたが、いくつか読み違えもあった」と反省を言葉にする場面もあった。全身を採寸できる「ゾゾスーツ」を無料で配る戦略や、それに合わせてPB(プライベートブランド)商品を増やす戦略、アパレル会社の意向に関係なく一律に値引きする戦略は、長くゾゾを支えてきた出店企業、オンワードホールディングス、ユナイテッドアローズなどの離反を招いた。
前澤は2018年4月にゾゾ初の中期経営計画を発表し、「10年以内に時価総額5兆円」「グローバルアパレルトップ10入り」とぶちあげた。それを実現するためツイッターでの情報発信などを控えて本業に専念する方針を「前澤フルコミット」と表現した。
ゾゾの株式時価総額は18年7月に記録した1兆5000億円超から6400億円前後まで落ち込んだ。ヤフーへの売却が報じられると株価は高騰したが、それでも12日終値で7657億円にとどまる。ピークの半分だ。「前澤フルコミット」は明らかにうまくいっていない。