(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「ロシア疑惑」が虚構だったとすると、この「疑惑」を捏造し拡散したのは一体誰なのか――米国の国政の場で「ロシア疑惑」を巡るうねりがこんな方向へと変わってきた。
改めて焦点が当てられたのは、トランプ陣営とロシア政府機関のつながりを最初に伝えた、イギリス政府の元スパイによる「スティール文書」である。トランプ政権のウィリアム・バー司法長官は、同文書を含む「ロシア疑惑」の発信源についての捜査を開始する方針を言明した。
疑惑の発信源「スティール文書」が捜査の対象に
ロバート・モラー特別検察官は、「2016年の米国大統領選挙でのトランプ陣営とロシア政府機関との共謀しての選挙不正の行動を裏づける事実はなかった」と最終報告書で結論付けた。バー司法長官はこれを受けて、「ロシア疑惑」がなぜ、どのように生まれたのかを捜査して解明する意向を明らかにした。
その際、まず捜査の対象となるのが「スティール文書」であることは多くの関係者が認めている。「ロシア疑惑」がほとんど事実であるかのような報道をこの2年近く続けてきたニューヨーク・タイムズ(4月19日付)も、「モラー報告書はスティール文書の精査を再開させる」という見出しの記事を掲載した。