政治評論家たちは、現政権に対する国民の不満はまだ「爆発的」ではないと見ている。石油や天然ガスの価格が高騰しているおかげで、国民の生活は決して困窮しているわけではない。
とはいえ、政権への不満が高まっていることは事実である。
石油・天然ガスはロシアの救世主にはならないと、プーチン首相も自らEU首脳会談で認めている。また、クドリン財務大臣は、国家予算の負担を考えると2012年から社会保険・年金等々の支払いは難しくなると明らかにしている。
クドリン財務大臣は、「ロシアは石油・天然ガスに頼らずに財政を立て直すため、抜本的な構造改革を実行しなければならない。そのためには『公平な選挙』が必要である」と発言し、物議を醸している。ゴルバチョフ氏が言うように、現在のロシアでは「公平な選挙」が行われていないという指摘でもある。
プリマコフ氏が残した政界への「遺言」
この3月、ロシアの政治界で長年、重鎮として活躍していたプリマコフ元首相が、政治舞台から退く。プリマコフ氏は一貫してプーチン路線をサポートしていた人物だ。
プリマコフ氏は政界を退く前に、政界への「遺言」のようなメッセージを発表した。それは、メドベージェフ大統領の「近代化」路線に対する「7つの異論」(アンチテーゼ)である。プリマコフ氏はこの中で、現政権が行っている経済・社会発展路線について否定的な見方を示している。
まず、メドベージェフ大統領が大きな期待をかけている「イノベーションセンター」の設立は期待通りの効果は生み出せないだろうと論じている。
プリマコフ氏は、日本をはじめとする先進国の成功モデルを引き合いに出して、「高度に発達した産業なしにイノベーティブな近代化はあり得ない」と指摘する。崩壊したソ連時代の産業の代わりとなる新たな産業の育成が不可欠であり、その大変な問題の解決には、絶対条件として民主主義の発展が欠かせないという。
