大学3年生の就職活動は、3月がピークである。早いところでは4月に内定が出るので、4年生の1年間は「消化試合」になる。学生は消耗するし、教育は成り立たないし、企業も採用に費やすコストが大きすぎるので、たびたび就職協定や自粛が叫ばれてきたが、一度も守られたことがない。なぜだろうか?
それは新卒一括採用が、ある意味で合理的なシステムだからである。大学生が就職難だというが、昨年3月末の内定率は9割以上。大卒の求人倍率は1.2倍程度なので、会社を選ばなければどこかに入れる。
これに対して他の国では就職の時期がバラバラで、通常の求人と同じく職種を決めて募集するので、英米のカレッジの新卒就職率は3割程度である。
だからよく言われる「就活に振り回される学生はかわいそうだ」という話は一面的だ。職種を決めないで一括採用するおかげで、職業経験も専門知識もない学生でも就職できるのだ。
これは戦後の高度成長期のように労働力が足りない時、能力を問わないで大量に採用するのには向いていた。
しかし、新卒一括採用は、高度な専門能力の問われる時代には向いていない。特に情報通信や金融のように専門知識が細分化されている分野では、人事部が「大卒総合職」といった漠然とした採用をしていたのでは、最適な人材が採れない。
職種に対する適性を見ることができないので、何でも屋のサラリーマンばかり採用され、専門的な仕事は下請けに出さざるを得ない。このためソフトウエアのような専門的な業種では、日本企業の国際競争力は目に見えて低下した。
就職サイトが助長する学歴差別
特に最近、問題になっているのが「リクナビ」や「マイナビ」などの就職サイトだ。かつては物理的に制約されていた会社への応募がクリック1つでできるようになったため、人気企業では応募が5万人にも及ぶ。